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その名にちなんで ジュンパ・ラヒリ

その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)
(2004/07/31)
ジュンパ・ラヒリ

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数々の名作を生み出した新潮クレスト・ブックスが、10周年を迎えました。その数、70冊。
といっても、わたしが読んだのは「朗読者」のみ。翻訳物ということでどうしても敬遠してしまうのですね。
この作品は新潮クレストブックの中でも、豊由美さんが選んだ3冊というのに惹かれ、手に取った1冊です。豊さんが傑作というだけあって、なかなか良かったです。恐るべしラヒリ。新作も出ているので予約しなくては。

若き日の父が辛くも死を免れたとき手にしていた本にちなんで、「ゴーゴリ」と名づけられた少年。万感の思いがこめられた名を、やがて彼は恥じるようになる。生家を離れ、名門大学に進み、改名。新しい人として生きる晴れ晴れとした自由さと、ふいに胸を突く痛みと哀しみ。名手ラヒリが精緻に描く人生の機微。深く軽やかな傑作長篇。【新潮クレスト・ブックスHPより】

<故国を離れた夫婦と故国を知らない子ども。数奇な名前を持つ息子の半生>

これは、すごい!紛れもない傑作です。
冒頭から、ただならぬ気配。
父アショケは、22歳のとき、祖父を訪ねて列車に乗る。その列車が、大脱線事故に遭い、アショケも巻き込まれてしまう。この時、手に持っていた1冊の本が、アショケを救うことになる。この本こそ、ロシアの作家ゴーゴリの「外套」。
物語全体がこの冒頭の父親の事故が影響しているので、敢えてネタバレして書いてしまいます。やがて、結婚しアメリカに渡り、子どもをが生まれます。名付け親になってもらおうと、依頼していた祖母からの便りが、なぜか届かない。父はゴーゴリという名を、この子どもにつけることにする。

そこから、息子ゴーゴリの人生が語られていきます。しかし、事件があるわけでもなく、ただ淡々と幼少時からの家のこと、学校のことなどが綴られていきます。
そして、成長したゴーゴリは自分の名前にコンプレックスを感じ、改名してしまいます。ゴーゴリと家族、そして出会っていく女性との生活など、丹念に丹念に書いていきます。

そして、さまざまな死と別れを経験していきます。父と母とのエピソード。名前に隠された秘密なども徐々に分かってきます。自立をしていくゴーゴリ。そして、離れ離れになる家族。静かに静かに、感動が押し寄せます。
そして、ラスト。まるで映画を見るような展開。あー、だめだと思いつつ、泣いてしまいました。

名前にコンプレックスを持っていたのではなく、自分を形作っている、故国インドでの生活習慣やその生い立ちにコンプレックスを持っていたのですね。その代表が、名前だったんです。
そんなゴーゴリの半生も30歳までしか、書かれません。わたしとしては、もう少し読んでみたかったなー。短すぎるんですよ。もっと、この家族の話を読んでみたいのです。
しかし、この作者がうまいのは、ここで敢えて終えていることなんですね。

ゴーゴリはいろんな経験をして、人生を生きていくんでしょう。名前は自分を表すIDだけれど、決して名前だけがすべてではないということが、しっかり分かっていますから。
アメリカに行けば、自由を得られる。名前までも変えることができると喜ぶ、ゴーゴリ。何と皮肉な書き方なんでしょう。
故郷を忘れられない、両親と故郷を知らない子どもたち。その姿がまたおかしいんですよ。

しみじみと胸にしみ込む、これは傑作でしょう。秋の夜長にまさにうってつけ。しみじみとこの物語を読まれることをお勧めします。ジュンパ・ラヒリの他の2冊も読みますとも、わたし。
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