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ボーナス・トラック 越谷オサム

ボーナス・トラックボーナス・トラック
(2004/12/21)
越谷 オサム

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<こいつ、なかなかいいやつなんだ。幽霊物の快作!>

ここだけの話、わたし、幽霊物に弱い。思い起こせば傑作「異人たちの夏」(山田太一)や椿山課長の七日間(浅田次郎)、秀作「雨恋」(松尾由美)、そして、この作品はわたしの幽霊物のお気に入りにランクイン。実に面白かったです。またお気に入りの作家ができてしまいました。

こいつ、なかなかいいやつなんだ、幽霊であることを除いては…ハンバーガーショップで働く「僕」は、ある雨の晩、ひき逃げを目撃したばかりに、死んだ若者の幽霊にまとわりつかれる羽目に。でも、なかなかいいやつなんだ、アルバイトの美少女にご執心なのは困りものだけど…。「僕」と幽霊がタッグを組んだ犯人探しの騒動を描いて絶賛された、ユーモアホラーの快作登場!第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。【BOOKデータベースより】


この作品、越谷さんのデビュー作だったんですね。おまけに、第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。とてもデビュー作とは思えない、快作の登場です。

話はいたって、シンプル。ある夜、ひき逃げに遭遇した主人公、その被害者の幽霊が取り付いてしまう。そして、ひき逃げの犯人を捜すという物語なんですが、この主人公、草野よりもむしろ、幽霊の亮太の何と魅力的なことか。理不尽なひき逃げにより、懸命の草野の救助にも関わらず、幽霊になります。草野は幻覚と思っていたのですが、どうやら幽霊の姿が見えるようになったらしい。この過程がどうも可笑しくて笑ってしまいました。最初は重かった話が、どんどん加速していきます。

どうやら後輩の南にも同じ様に幽霊が見えるらしいのです。その南と草野が、亮太をひき殺した犯人を追っていくのですが、それは本筋であるんですが、あくまでサイドストーリ的に流れていきます。南しか見えない、怨念を感じる幽霊と遭遇します。

草野やだいちゃんやしょうちゃん、首ぽきぽきのしょうちゃんの友だちはハンバーガーショップで働いています。激務で休みは寝ているだけ、何もしない、できない草野に、亮太は働き方や仕事のやり方、などを、アドバイスしていきます。それがまた妙に可笑しい。こうした伏線が、最後に効いてくるんです。あっ、そうそう、プロレスゲームに興じる二人がまたいいんです。

こうした伏線が最後に向っていきます。そして、ラストは涙。わかっていたんですが、泣いてしまいました。亮太っていいやつだようなー。ただしょうちゃんにつきまとって、だいちゃんを脅迫するところはいただけませんでしたが。

上手いなー、この作家。いろんな細部がここまで書けるなんて。この方、音楽とプロレスに詳しい方、または好きな方なんでしょうね。
また、いろんな会話の中に、上手さが光ってます。冒頭の車をあおられ、車をよせ、草野は悪態をつくんでする。「バーカ、事故れ」と。こんなこと、言ってしまうんですよね、つい。こうした言葉や、ゲームの描写や、会話が実に的を得ています。上手いよなー、上手い。

この方、まだ三作しか、出されていないんですよね。最近、三作目が出たみたいですが。これは、コンプリートしなくてはいけない作家さんですね。
最初は、怖く、中盤は笑って、最後は泣いて、余韻すら残す。何といい作品なんでしょう。こんな作品を読み逃していたなんて。今さらながら、読書は深い。
読んでいない人は、ぜひぜひ。オススメです。
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ビールボーイズ  竹内 真

ビールボーイズビールボーイズ
(2008/02)
竹内 真

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<ビール・ダーッシュ!>

いつも寄らせてもらっているブロガーさんが、この作品をほめていらっしゃったこともあり、読みました。この作家さんも初読みなので、どうかなと思ったのですが、なかなか。
本の世界って、いろいろな蘊蓄を教えてもらえることが楽しいですよね。この作品は、ビール一色。楽しく、読ませていただきました。

北海道の新山市、正吉たちは、ビール工場の撤退のために憧れの茜が転校していってしまうのを惜しんで、秘密基地に集った。茜を転校させてしまうビールという存在へ復讐するために、皆でビールを飲んでしまおう! これが正吉の地ビール造りへと誘うきっかけだった。4人の仲間たちの12歳から30歳まで、ビールで結びついた友情と成長の軌跡を描いた感動の物語。名作『カレーライフ』につづく、フード系成長小説の決定版。きっとビールが飲みたくなるコラム付き。【東京創元社HPより】


お話は、幼なじみの四人組が秘密基地で、友だちを追いやった、ビール工場に復讐するために、ビールを飲み干すところから始まります。そこで見つけたプロペラは何のため?
四人組のそれぞれの人生と成長と別れの中から、大切な友情を描いた痛快な青春小説といっていいでしょう。ビール祭りと銘打たれた各章のタイトルは、なんでもなくただの幼なじみの飲み会。その飲み会が今後の人生にちゃんと繋がっているんですね。うまいです、この辺り。

そして、この幼い四人組のエピソードが妙に自分の学生時代とダブって、懐かしい。修学旅行でのビール祭りなど、笑うとともに、同じようなことしてたよなーと思うんですね。
そんな四人組なのですけど、ビール祭りを行った、今は東京に出て行る広治郎のペンション・パックの空き家を小火で燃やしてしまったことが、ずっと心に残ったままなのです。そこで、勇が消防署につかまるのですが、なぜ、つかまることになるのか。再び広治郎と再会し、正吉と薫がそこで勇に指示されて見つけたもの。ここのシーンでジーンときましたね。

ビールとは切っても切れない4人組。正吉は地ビールの生産を。薫は地元をPR。広治郎は町おこし、勇はバックアップ。そして、最後は。
ある意味、うらやましくなる友情の物語。いいですよね、この話。正吉の真面目な努力に頭が下がると同時に、ここまで一途に夢を追えることの素晴らしさ。なくしていたものを思い出させてもらいました。
そんな仲間に正吉が、伝えた感謝のもの。これがまたいいんですね。

薫の設定は、そうきたかと。特段、この設定でなくても良かったような気がするんですが。ちょっと違和感。普通の設定で良かったのではないかなー。そこが、少し引っかかってしまうのでした。まっ、そういう設定でないと、茜に繋がらないというのもあるのかも?

各章の間に挟まれたビールの蘊蓄が妙に詳しくて、最初は煩わしく思っていたのですが、これもちゃんと各章につながっていることに気付く。なるほど、ビールって素晴らしいよな。
元々、わたしはビール党。体調不良もあって、ビール断ちをしていたのですが、これを読んで復活。何とも罪作りな一冊でした。
この作品を読めば、きっと、あなたもビールが飲みたくなる一冊です。

素晴らしきかな、ビール。
友情とビールに乾杯!
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ツバメ記念日-季節風*春 重松 清

ツバメ記念日―季節風*春ツバメ記念日―季節風*春
(2008/03)
重松 清

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<春、巣立ちの時。春の記憶を呼び戻す12編>

まだ画像が出ない(泣)。もう出てもいい頃でしょう、amazonさん。
わたくしごとですが、胃腸から来ていると思われる風邪で、何年かぶりに発熱。この金曜から寝込んでおりました。今はだいぶ良くなったのですが、この春という季節、花粉症をはじめ、わたしの体調にはあまり相性が良くないようで困ったものです。

記憶に刻まれた“春”は、何度でも人生をあたためる。憧れ、旅立ち、別れ、幼い日の母の面影──温かい涙あふれる12の春の物語【文藝春秋HPより】


久しぶりの重松さんの作品ですが、良かったですねー。本当にタイトルもピッタリの季節感。この作品は季節に合わせて読んでいただきたいなー。12編の話の中に、春の記憶が蘇ります。

さて、この12編の短編なのですが、どの作品も心にしみこみます。春という季節を12編に収めきっている、重松さんの力量に脱帽ですね。
季節感を味わってもらうため、春らしいタイトルを列挙すると、「めぐりびな」「球春」「よもぎ苦いか、しょっぱいか」「さくら地蔵」「せいくらべ」「目には青葉」「ツバメ記念日」とこれだけでも春を感じてしまいますね。そして、内容もそれぞれ、春を感じるものとなっているんです。卒業、別れ、巣立ち、出会いとこれだけ書かれると、ウルウルですよね。
さて、全部は書けないので好きな作品の内容を少し。

「めぐりびな」…夫の実家から贈られたおひな飾り。しかし、わたしには亡くなった母の思い出のおひなさまがある。やむにやまれず、めぐりびなにしようとするが。

「島小僧」…卒業し島を離れる3人組。「桜会」(島から出て行く青年団の送別会)のあと、島から出て行くことになるが、その桜会は本土との橋もできたこともあって、荒れに荒れてしまう。

「さくら地蔵」…そのお地蔵さまには、全国各地の桜が集められるという。交通安全を祈願して、トラックのドライバーが供えるのだ。定年を前にしたドライバーの胸に去来する思いとは。

「せいくらべ」…両親の都合で引越した先は、二棟続きの狭いアパート。隣からは、苦情の手紙…。一体どうすればいいんんだろう。わたしは、となりに謝りにいく。

「ツバメ記念日」…共働きでぎくしゃくした二人。一人娘の由紀は、風邪がこじれ、大変なことに。やっとの思いで九死に一生を得るが、その朝、妻が駅で見たものは。

それぞれ、好きな作品があると思いますが、わたしは、「島小僧」「さくら地蔵」「せいくらべ」の順でしょうか。それぞれ、「島小僧」の旅立ちが印象的です。「さくら地蔵」のラストは、これまたジーンと来てしまいます。「せいくらべ」は話が意外な方向に行くところが、結構爽快で…。

時あたかも、春真っ盛り。重松さんの春を感じてください。そして、みなさんの中にある、春の思い出に触れてみてください。きっとここまで劇的ではないかもしれませんが、物語が造れそうな気がしてくるから不思議。
ちなみにこのシリーズ「夏」(6月)、「秋」(9月)、「冬」(12月)に発売されます。ここまで、季節感を出さされると、もう買わずにおられないですね。わたしは、春を買ってしまったものですから、絶対買います。
それから、最後に装幀が吉田篤弘・吉田浩美さんです。これまた、すごくいいです。何から何まで素晴らしい。買ってよかったと思えるシリーズです。
わたし、これから先、何回読み直すんだろうか(笑)。
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ルピナス探偵団の憂愁 津原泰水 

ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)
(2007/12)
津原 泰水

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<永遠の友情を。固く誓い合う>

この作家さんも初読みです。この方、広島の出身で、わたしとしてはどうも「ブラバン」が気になっていたのですが、読まずじまい。ミステリ作家として、名を馳せていらっしゃいますね。この作品は、よく行く読書ブログで紹介さたのと、書店員によるオススメ本として、取り上げられていましたので、読んでみることに。

高校時代「ルピナス探偵団」として様々な事件に遭遇してきた少女3人と少年1人。卒業後、それぞれの道を歩んでいた4人のうち、1人が不治の病で世を去った。久々に顔を合わせた3人に残されたのは、彼女が死を前にして百合の樹の林に造らせた、奇妙な小路の謎だった――。第1話「百合の木陰」から時を遡り、高校卒業式を目前に殺人が起きたルピナス学園で、彼らが授かった“祝福”を描く第4話「慈悲の花園」までを辿る。津原泰水だからこそ書き得た、少年少女たちの「探偵」物語。〈ミステリーズ!〉連載の4編を大幅加筆修正。


さて、この作品はタイトルからすると、こてこてのミステリーと思いますよね。もちろん、ミステリーには違いないんですけどそれだけではないんです。友情と青春小説でもあるんです。そこが、いいんですね。学生の時からの友だちの四人組、彩子、キリエ、摩耶、祀島。
仲がいいだけでなく、その周囲に起こる難事件を解決していくんですが、冒頭の「百合の木陰」では摩耶が病死し、集まるシーンから始まります。なぜ、美人で誰からも好かれた摩耶が、早々とぱっとしない男性と結婚したのか。そこが謎なんですが、これだけではなく、広大な庭の木を縫うように蛇行した道を作っているんです。なぜ、こんなことをしたのか。
ラストは、泣けますー。

そして、この連作の短編集は、25歳の摩耶の葬儀で集まる第1話から遡っていき、ラストの「慈悲の楽園」ではルピナス学園の卒業式で終わります。遡っていくんですね。その中に、この4人組の仲のよさ、友情が凝縮されているんですね。わたしは、一作目の「ルピナス探偵団の当惑」は未読なんですが、十分楽しめました。この構成の最後の卒業式で、終わるというところが、大きなポイント。すなわち、友情の誓いで終わらせているというところが、深く感動を呼ぶんです。
この遡る手法、最近の流行ですかね(笑)。結構、これ読ませます。

友情小説としても上手いのですが、この作品は、ミステリー。内容はどうかというと、こちらは、もう一つでしょうか。「初めての密室」ではありえない密室の謎を解くんですが、まあ普通かな。「犬には歓迎されざる」では推理で挑戦されるんですが、この四人組が解決していくんです。謎を解くのは、論理的思考の祀島。様々な博学も披露し、楽しませてくれます。

やはりこの小説は、謎を解くというミステリではなく、友情小説と読むのがいいと思います。「初めての密室」で見せる摩耶の勇気にも感動しますね。そして、それは1話への伏線になっているんですというか、生い立ちの説明になっているんですね。そこがうまい!

四人組以外でもキャラが微妙に面白いし、笑う箇所もありました。そして、会話が絶妙。彩子の姉不二子は際立っていますね。そして、潔いきっぱりしたキリエがいいのです。
やはり、1話があっての最終話ですね。最終話を読んだ後、もう1回、最初の話に読んでみた時、じんわりとした感動を与えてもらえます。

友だちって、友情っていいですね。なんだかうらやましくなりました。
一人減ってしまったけど、このシリーズ続けてもらいたいと思います。その前に、第1作を読まなくてはです。
好きです、この作家さん。他の作品も読んでみたいと思いました。
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阪急電車 有川 浩

阪急電車阪急電車
(2008/01)
有川 浩

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<人数分の物語を乗せて、電車は走る>

読書ブログをやっておられる方の中で、結構、図書館シリーズを取り上げられておられる方、絶賛される方が多い中で、なぜか、手に取れないわたし。しかし、こんななわたしが、カバーデザインに魅かれて、読んでみることに。有川さんて、こんなに上手い作家さんだったのですね。

恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車……関西のローカル線を舞台に繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。大ベストセ ラー『図書館戦争』シリーズの著者による傑作の連作集。【幻冬舎HPより】


連作小説の舞台はタイトルどおり、阪急電車、今津線。片道で15分。そんなローカル線があることに驚きですね。そしてまた、有川さんも住んでおられるところだとか。
関西圏にいった時に目にするんですが、阪急の電車はひときわ目を引く車体ですよね。実に可愛いんですね。最も実際にはどうも電鉄会社が多くて、よく分からないのです。同じ駅で二つの会社が同居していたりとか。でもでも、今度関西に行く時には、ぜひ乗ってみたくなりました。

物語は、始発の宝塚駅から終着の西宮駅北口の間のお話です。宝塚駅で図書館で同じ本を手に取りそうになって、気になっていた女性と出会い、その女性は、河川敷きに造られた「生」の字を見ているんです。そこから、次の駅までの恋への発展が絶妙ですね。いきなり、胸キュンではないですか。

次の駅で乗り込んできたのは、恋人を後輩に寝取られた女性が、結婚式に殴り込みをかけ、散々な目にあわせての帰りという設定ですね。今度は、痛い話ではないですか。この翔子という女性の思いと、気丈な性格と爽快さがたまらないんですよね。そして、虚しくもあるんです。次の駅で出会った、老女と孫娘の二人連れに、小林駅で降りてみることを勧められるんです。その駅と街がいいんです。どこがいいのかは、本編を読んでください(笑)。

他に、すぐに暴力を振る彼氏になかなか踏ん切りがつかず、ずるずる引っ張っている女性や、会社員と付き合っている女子高生など、様々な人が乗り合わせてきます。微妙に関連しているから、面白い。特に女子高生の会話は絶妙。笑ってしまいました。どうやら実話らしい。

そんな片道の話の後は、半年後の折り返し。この構成が絶妙なんですね。あ、あのカップルやあの老女と孫、女子高生が再び登場。それぞれの人生のその後が展開されるんです。特に、女子高生えっちゃんの彼氏がいいんですね。「男の中の男」と叫んでしまいそうになりましたが、そんな男はいないでしょーとも。翔子は結婚式の傷を癒しつつ、小林駅近郊に引越しているし。

ほのぼの、笑い、胸キュン、ホロリなど何とも、忙しく、いろんな思いにさせてもらえる作品です。あっという間の今津線の旅でした。何せ15分ですものね(笑)。
よくぞ、こんな良い作品を書いていたきました。わたし、『図書館シリーズ』読みますとも。一躍、お気に入り作家さんにランクイン。
それにしても、小林駅に下りてみたいよなー。
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LOVE or LIKE

LOVE or LIKELOVE or LIKE
(2006/07)
石田 衣良、中村 航 他

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<男性作家が紡ぐ六つの恋愛小説>

あまりに忙しくて、レビューが停滞してしまいました。と、いっても地道に本は読んでいますので、ご心配なく。誰も心配してないか(笑)。この作品集、久しぶりに図書館に行き、読み始めたらはまってしまい、借りたのですが思いのほか良かったです。

内容(「BOOK」データベースより)
男女が出会うと、いろいろな感情が生まれる。気になる、好き、愛しい、せつない…。友だちが恋の対象になるのは、どんなときだろう?転校生への憧れ、再会した同級生への複雑な感情、文通相手のまだ見ぬ異性へのときめき―。微妙な機微を、6人の実力派男性作家が描く恋愛アンソロジー。【BOOKデータベースより】)


なんといっても、このアンソロジーは、6人の男性作家による競演というところが凄いんですね。覆面の有名作家を含む6人の作品。友だちから始まる愛の形。なかなか、アンソロジーもあなどれません。わたしとしては、中村航さん、中田永一さん、真伏修三さんに出会えたことが、嬉しかったのです。アンソロジーって、作家さんとの出逢いが楽しめて、いいもんですね。第一弾の「I LOVE YOU」も読まなくてはと思っています。

さて、この作品集。個人的な好みもあろうが、「なみうちぎわ」、「ハミングライフ」、「DEAR」が抜きん出て、私の好みの作品でした。それではそれぞれの作品の解説と感想を短めに。

「リアルラブ?」石田衣良
同じ大学、同じバイト先に勤めるヤスとカナコ。二人が付き合い始めるのには、時間はかからなかった。しかし、二人の恋する人はそれぞれ違う相手。二人が憧れの先には現実が。のっけから、かなり引き気味な内容。でもまあ、こんな恋愛もありかな。年上のマダムと家庭もちのマスター。二人の恋愛の対比が絶妙ですが、やっぱり、いきなりのシーンに引きました。

「なみうちぎわ」(中田永一)
家庭教師をしていた時、水難事故で3年間眠りつづけ、目覚める。その教え子は、毎日、通ってきてくれたという。その教え子との恋愛への過程と、事故の真相は。いやー、面白い。この作者、どうやら乙一さんらしいのだが、わたし乙さんの作品も読んだことがない。ミステリー要素たっぷりの切ない恋愛小説です。切ないといいつつ、幸せな気分にも。

「ハミングライフ」(中村航)
昼休み行く公園。そこには猫が。餌をやるうち、そこの木の根元に洞があることに気付き、手紙をやり取りすることに。恋の始まりがこんなに素敵とは。なかなか、いい感性だよな、この作者。読まず嫌いはやめなくてはと思いました。

「DEAR」(本多孝好)
12歳の時の花火大会で20歳での再会と、池に捨てた恋の真相を明らかにして、はるかは去った。そしおて、20歳、同窓会で出会った三人はあの池に向う。話の展開が絶妙で、上手すぎる。思わず、最初に戻って、読んでしまいました。幼いときの憧れと、現実が切なすぎる名編です。

「わかれみち」(真伏修三)
転校生に恋してしまうのだが、思いがけず、彼女の方から誘われることに。1回きりのデートが、生涯の思い出になる。そして、彼女の日傘が。
これまた、切ない話ですね。でも彼女は彼の中にしっかり生きている。こんな、場面って、生涯の中にありますよね。ここまで劇的ではなくて、自分の恋愛を思い出すから不思議。本の効果ですよね。

「ネコ・ノ・デコ」(山本幸久)
アンティークの店の壁をオープンスペースにし、希望を募ったが、そこに現われたのは、有名作家。それは、いけてなかった同級生。その彼女は見違えるような女性に変身していた。それだけでは済まず、彼女は私の過去にも踏み込んでくるのだが。一生懸命働いて、掴んだささやかな店。それを否定するように現われた同級生の対比がこの話のキモですね。ただ、恋愛小説と言えるかは、疑問。もう一つの感ありです。

という具合で、最初と最後の話がいまいちでしたが、あとの話はとってもいいです。幼い頃の憧れ、初恋、愛しさなどとっても胸がきゅんとする様な話なんですね。これを、男性作家が書いたというところがまたいいんです。わたしは、「なみうちぎわ」の小太郎と「DEAR」の3人組にやられてしまいました。これも青春の1ページかな。若いって何とすばらしいことか。そして、恋愛の素晴らしさよと思える作品集です。
サクサク読めますので、お気に入りの作家を見つけるのもいいのでは。アンソロジーの楽しみはここにある。満足でした。
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決定!2008年本屋大賞

第5回を迎える、2008年本屋大賞が決定した模様です。
大賞はこの作品↓

ゴールデンスランバー
ゴールデンスランバー

2位は「サクリファイス」
3位は「有頂天家族」

わたしは途中まで、本命は、「映画篇」、対抗に「八日目の蝉」と予想していたので、少しびっくりしました。
しかし、「ゴールデンスランバー」を読んでからというもの、やはり、これは大賞候補かなとも変更。一躍、本命になってしまいました。
この作品の重厚さと爽快さは、他を圧倒していたのかなと思っています。
一体、いくつ賞を取るのでしょうか。まずは一つ目ですね。

おめでとう、伊坂さん。まさに伊坂さんの集大成的な作品。未読の方は、この作品をぜひぜひ。
凄いです。決して、冒頭から侮られないよう、読まれることをオススメします。
明日から、店頭に並ぶんでしょうね。
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新世界より(上) 貴志祐介 

新世界より 上新世界より 上
(2008/01/24)
貴志 祐介

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<舞台は、1000年後の日本。八丁標(はっちょうじめ)の外に出てはならない>

久しぶりの、貴志さんです。わたしが読んだのは、「黒い家」の一作のみですが、ただひたすら怖かったことを覚えています。果たして、この作品はどうなのかと思い、読み始めたんですが、厚さを忘れる面白さ。これは、すごいと思える作品でした。

ここは汚れなき理想郷のはずだった。1000年後の日本。伝説。消える子供たち。著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!【講談社HPより】


何が凄いかといえば、やはりその厚さ(笑)。まだ上巻だけしか読んでいませんが、500P。これは手ごわいと思っていたのですが、結構スイスイ読めました。
それは、この物語が、何とも謎だらけの作品だからです。

物語は、1000年後の日本。利根川流域で神栖66町に住む子供達が、呪力を覚えたところから、始まります。この呪力、この千年の間に、人間同士を淘汰し、何と5、6万人に人間を減らしている。この千年の間に一体何があったのかということが、この話のポイントでもあるんですね。聞くに耐えない、人間同士のおぞましい歴史を子供たちが知っていくんですね。

二つ目のポイントは、その国には、伝説があるということです。その伝説は150年前に現われた「悪鬼」と80年前の「業鬼」。その戒めとして、国の境には八丁標(はっちょうじめ)という結界が張られているんです。世の中の全てを破壊し、手に入れることさえできるという念動力(サイキック)に目覚めた子供達は、徹底した呪力の訓練を受けているんです。そんな子供達が、夏期キャンプに八丁標の外にでてしまう。そして、冒険が始まり、とんでもないことに巻き込まれるんですね。

何より、話を面白くさせているのは、この物語に出てくる千年後の生き物ですね。カニを巨大化し、決して挟んだ獲物を逃がさず、最後は分断してしまう「トラバサミ」。蛇でありながら、偽の卵を産みつけ、その卵の臭いが何ともいえない武器になっている「カヤノスヅクリ」。ネズミでありながら、知能は
優れ、コロニーを作って、コロニー同士で争っている「バケネズミ」。その他、「風船犬」や「ミノシロモドキ」など。この生物達が、結構ポイントを握っているんですね。
どうも、この生物達、人間の呪力が作っていったようなんですが、そこは上巻では良く分かりませんでした。

上巻の最後にやっと、たどり着いた時、最初の一つの伝説に一致するんですね。ではでは、もう一つの伝説は何、何なのと思った時、上巻は終わります。ありゃー、それはないでしょーと思いつつ、展開が上手いなーと感心。最初は、ちょっと時間がかかりますが、夏期キャンプ辺りから、のめりこんでいきました。その夏期キャンプのカヌーからの星を見るシーンが、非常にいいんですね。静寂の中の美しさ、感動します。しかし、待っているものは決して穏やかなものではありませんでした。

いろんな謎の真相は何?この少年少女の5人組の将来は。下巻が早く読みたくなりました。これは、きっとすごいです。
プロフィール

よし

Author:よし
本好きですが、読むのは遅いです。読書メーターやってます。

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