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3月に読んだ本

3月は、仕事が忙しいこともあって、読めませんでした。
それでも9冊は、今の自分の中で良しとしましょう。
↓この9冊です。

23.建てて、いい? 中島たい子
24.がらくた 江國香織
25.すじぼり 福澤徹三
26.嘘をもうひとつだけ 東野圭吾
27.天使はモップを持って 近藤史恵
28.返事はいらない 宮部みゆき
29.ツバメ記念日―季節風*春 重松 清
30.少女には向かない職業 桜庭一樹
31.新世界より(上) 貴志祐介

3月のベストは…↓
ツバメ記念日―季節風*春
ツバメ記念日―季節風*春
春をテーマに12編。どの短編も素晴らしいです。それぞれの胸にある「春」が蘇ります。
詳しくは、後日感想で。

印象に残った作品は↓
すじぼり
すじぼり
行き場のない青年のはけ口は、ヤクザの世界。奇しくもその世界の終焉を目の当たりにすることに。ほろ苦く、鮮烈で、疾走する青年。そして、残ったものは。その世界に入れそうで入れない中途半端な青年が見つけたもの。苦すぎる結末ですが、すごいです。

そして、3月までのベスト10!
1.ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎
2.黄金の王 白銀の王 沢村 凛
3.私の男 桜庭一樹
4.家日和 奥田英朗
5.ツバメ記念日 重松 清
6.風に顔をあげて 平安寿子
7.いっぺんさん 朱川湊人
8.相棒 五十嵐貴久
9.木洩れ日に泳ぐ魚 恩田 陸
10.渋谷に里帰り 山本幸久

少し前に読み上げた「新世界より・上」も来月は入りそうな予感がします。まあ、下巻を読んで決めていきます。6位以下は変動する可能性大。来月も忙しいですが、今月並みに読みたいと思っています。 
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返事はいらない 宮部みゆき

返事はいらない (新潮文庫)返事はいらない (新潮文庫)
(1994/12)
宮部 みゆき

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<傑作「火車」の原型がここにある>

この作品は、宮部みゆきがブレイクしたあの「火車」の1年前に書かれた作品です。これ、再読のような。困ったことに、全く覚えていない(笑)。しかし、改めてお気に入りの作家さんを読み直してみると、傑作は書かれるべくして、書かれたと思うんですね。そんな傑作が書かれる前夜の短編集です。

失恋からコンピュータ犯罪の片棒を担ぐにいたる微妙な女性心理の動きを描く表題作。『火車』の原型ともいえる「裏切らないで」。切なくあたたかい「ドルシネアにようこそ」など6編を収録。日々の生活と幻想が交錯する東京。街と人の姿を鮮やかに描き、爽やかでハートウォーミングな読後感を残す。宮部みゆきワールドを確立し、その魅力の全てが凝縮された山本賞受賞前夜の作品集。【BOOKデータベースより】


どの作品にも、大ブレイク作「火車」の、兆しがあります。
表題作は「返事はいらない」は、失恋の挙句、自殺まで考えた主人公がある老人と出会い、元彼の勤めている銀行に復讐を企てるというもの。キャッシュカードの仕組みがかかれており、へぇーと思いましたが、今はこの仕組みも使われていないんでしょうね。当時、ここまで調べて完全犯罪に仕上げた腕はお見事。感心の作品です。

「ドルシネアにようこそ」…この作品集での一番好きです。駅の掲示板にいたずらに書いた伝言。ある日、それに応えてくれた人が。ひょんなことで「ドルシネア」に行くことになったが、その真相は。ラストがとっても爽やかで、気持ちのいい作品です。しかし、クレジットカードで買い物をする女性など出てきて、これまた、「火車」を連想させます。主人公の地道な努力に涙。

「言わずにおいて」…ある夜。川べりを歩いていた女性が車の男性に「やっと、見つけた」と叫ばれ、車は横転。運転手は死亡してしまう。その真相とは。

「私はついていない」…結婚前の従姉妹から、借金でなくした婚約指輪の代わりに、泣く泣く母の結婚指輪を代わりに使うことに。あろうことか、その指輪も、籠抜け詐欺で取られてしまう。指輪を取り戻すため、必死に探す主人公だが。この作品もラストの切れがいいんです。従姉妹が競馬で50万円使ったというところも、いろんな意味で今の社会への警鐘ですね。

洋服や、競馬や収入に見合った生活ができない、東京という都会。作者はこんな風に書いています。「地方から見れば、夢が実り富が待ち華やかな暮らしが約束されている東京があるのだろう。…東京は無限に金を与えてくれる。楽しみを与えてくれる。決して裏切らないような顔をして」
宮部さんは、この作品を書いたとき、そんな風に社会や都会を見ていたんですね。東京生まれの宮部さんらしいなーとも思いました。だからこそ「ドルシネアにようこそ」に出てくる主人公に対して、温かいんです。

その他にも二編。宮部さんの作品は、決して古く感じませんねー。どの作品も今の社会も映しています。というか、その当時から見た将来への警鐘なんでしょうね。
しかし、そこには救いもあるんです。地道にまじめに頑張っている姿を応援しています。とても、いい作品集です。
次の宮部みゆきは、いよいよ「火車」の再読にします。楽しみです。
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天使はモップを持って  近藤史恵

天使はモップを持って (文春文庫)天使はモップを持って (文春文庫)
(2006/06)
近藤 史恵

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<掃除をやっていれば見えるものもあるのよ>

またしても、近藤さんです。この作品、ユーモアミステリーと思いきや、どうも違ったようで。各作品が、何だかとっても辛かったのです。でもでも、最後は…。

深く刺さった、小さな棘のような悪意が、平和なオフィスに8つの事件をひきおこす。社会人一年生の大介にはさっぱり犯人の見当がつかないのだが―「歩いたあとには、1ミクロンの塵も落ちていない」という掃除の天才、そして、とても掃除スタッフには見えないほどお洒落な女の子・キリコが鋭い洞察力で真相をぴたりと当てる。 【BOOKデータベースより】


何だか、時間がかかってしまいました。『タルト・タタンの夢』のようなほのぼの系を期待していたのですが、外れてしまいました。何でかなー。きっとこの作品が、日常に潜む人の悪意を描いているからなんでしょうね。決して爽快な話ばかりではありません。ただ、そんな人間に潜む悪意を、ビルの清掃をたった一人でやっているキリコという女の子が、解明していくんです。

冒頭の「オペレータールームの怪」では、新入社員の大介と清掃員のキリコとの出会いの章でもあるんですが、さっそく事件に巻き込まれるんですね。大介の机の上に置かれた書類が消えるんです。それが1回ではなく続いて。果たして真相は…。清掃をしている、キリコではないと見えないものが見えてくるんです。そして、「失敗したと人から思われることが、我慢できない人種が、この世にはるんだよと思うよ」というキリコにこの短編集が、そんな爽快のものではないと思わせるんですね。

会社が舞台ですから、さまざまな人間関係も出てきます。
「ロッカールームのひよこ」のセクハラの被害にあっている主人公を見てください。セクハラをされ続けても、なぜ反論できないのか。それは、加害者の生活と被害者の欲望が一致していたため。つまり、単にセクハラとは結論付けられない関係だったんですね。それを読まされたとき、ある意味ショックな結末であったかも。

「桃色のパンダ」は不倫をしているという噂の吉田部長の娘のパンダが引き裂かれる。誰が何のために。キリコはいいます。「心がすさんでくると、部屋やトイレは汚れてくるし、汚し方から、その人の精神状態が透けて見えてくる」と。これ、当たっているかも。精神的に疲れているときや、余裕のないときなど、汚しっぱなしだものね。わたしは、精神的にリフレッシュするときには掃除します(笑)。
この短編のラストは悲しいです。

髪をブリーチし、耳にはピアス、日焼けした肌に白いTシャツ、ミニスカート。おまけに美人。そんなキリコなんですが、最後の話「史上最悪のヒーロー」では、キリコが消えてしまいます。悲嘆にくれ、キリコを探す大介と誰もが読むんですよ、これ。いやー、騙されました。
この最後の話がこの作品集を落ち着きあるミステリーに仕上げています。
や、やられたと最後に思うでしょう。

本当にやられました。
続編も読みますとも。またキリコに会いたい。
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嘘をもうひとつだけ 東野圭吾

嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)
(2003/02)
東野 圭吾

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<嘘を隠すには、もっと大きな嘘が必要になる>

久しぶりの東野さんです。加賀恭一郎シリーズは一作しか読んでいませんでした。数ある積読本から引っ張り出して読みました。東野さんのミステリーらしくて、なかなか良かったです。

バレエ団の事務員が自宅マンションのバルコニーから転落、死亡した。事件は自殺で処理の方向に向かっている。だが、同じマンションに住む元プリマ・バレリーナのもとに一人の刑事がやってきた。彼女には殺人動機はなく、疑わしい点はなにもないはずだ。ところが…。人間の悲哀を描く新しい形のミステリー。【BOOKデータベースより】


この作品集のテーマはタイトルにもなっている「嘘」。犯罪を隠すために、容疑者がつく嘘を、加賀は一つの綻びから解きほぐしていきます。この論理的展開が快感なのです。「ガリレオ」のように科学的な解明ではないのですが、そうですね古いんですが「刑事コロンボ」のような展開かな。一つの矛盾点がどんどん広がり、さらに嘘を隠すために別の嘘が必要になる。そして、容疑者にカタストロフィーが訪れるんです。

ということなので、犯人は冒頭から提示されていますので、犯人当てではないので、その向きが好きな方にはちょっとと思われるかもしれません。前述しましたが「刑事コロンボ」的展開なのですが、コロンボのようなクセは加賀にはありません。あくまでスマートに解きほぐしていくのが、またいい。

収められている作品を紹介してみましょう。
↑の作品紹介にもある表題作「嘘をもうひとつだけ」は、元プリマ・バレリーナの悲哀と誇りを感じさせる作品です。どのように犯行が行われたかが、この作品のキモ。
「冷たい灼熱」…妻を殺した犯人のその動機と真相。そして、息子はどこに。社会問題ともなっているテーマが扱われています。
「第二の希望」…体操でオリンピックを目指す、母子の悲劇を描いた作品です。最後の競技会のシーンが悲しい。
「狂った計算」…冷たい夫を殺すために、仕組んだ罠が予期せぬ展開に。一番、お気に入りの作品です。なぜかといえば「容疑者xの献身」を髣髴させる展開に、感心と驚き。
「友の助言」…この作品集の中では、この作品が少し変わっています。交通事故で入院している友だちを見舞う加賀だが、なぜ事故を起こしたのかということを、解いて行きます。その真実がわかるラストは、とても悲しい。

どれも選りすぐりのミステリーです。そして、どの作品も人間の悲哀と、嘘をつかざるおえない人間の悲しさが見え隠れしています。
『容疑者xの献身』や『赤い指』に繋がる作品集です。
加賀恭一郎シリーズは二作目ですが、続けて読みたくなりました。
東野さんの人間ドラマより、ミステリーの方がより好きだという方にはうってつけの一冊だとわたしは思います。
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すじぼり 福澤徹三

すじぼりすじぼり
(2006/12)
福澤 徹三

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<行き場のない青年が見た、一つの時代の終焉>

今年度の大藪春彦賞の受賞作品です。タイトルからして、怪しい感じがしていて、どうもこれは、暴力小説なんだよなーとちょっとアレルギー反応もあったのですが、物語の展開に、のめりこむように読んでしまいました。もちろん、暴力シーンもありますが、この作品は、それだけではありません。

ひょんなことからやくざ事務所に出入りすることになった亮。時代に取り残され、次第に生きる道を失っていく昔ながらの組の最期に立ち会う少年の目を通して、一つの時代の終焉を哀切と共に綴る瑞々しい青春極道小説!【角川書店HPより】


初読みの作家さんで、そしてこのカバー。そして大藪春彦賞受賞ときては、暴力小説なのではと思うのはあたりまえなんですが、この作品はこれだけではなかった。これ、主人公の青春と成長小説だったのですね。いや、ハラハラドキドキしながら、北九州を疾走する青年を追って、のめりこんで読んでいました。

しかし、この主人公たちのだらしなさといったら腹立たしくて仕方ありませんでしたね。学業にも、生活にも生きる意味を見出せず、ドラッグに手を出し、ヤクザに追われる。そして、逃げ込むように駆け込んだのが、またヤクザ。救いようのない若者達に、腹立たしいことこの上ないのです。しかし、駆け込んだところの事務所の組長の速水に拾われ、気に入られるんですね。そして、バイトを始めます。そこでまたこの事務所の面々と親しくなる。いつしか、友情が生まれ、事件を通しての絆が生まれてくるんですね。絆というか、あちらの世界では義理と人情というのでしょうか。

自分が蒔いた種を速水組に刈り取ってもらったつもりが、とんでもない事件の発端だったんですね。組長も狙われ、親友となった松原も殺されるんです。もうどうしようもない生活にはまり込むんですね。しかし、組の連中は、堅気である亮を決して、ヤクザの世界に引き込もうとはしません。そこにいき詰まったこの世界の難しさに引き込ませたくはないという、それぞれの思いがこめられていたんですね。

ですが、それがわからない涼。松原の敵を打つため、刺青を入れる決心をするのですが…。ここから先はやめましょう。追い、追われる展開になっていきます。
若気の至りというしかないです。本当にどうしようもない。バカな連中です。若い故の失敗と代償は凄く大きなものです。でもこの亮を決して、頭から非難できなくなっていくんですね。若さとしかいえないです。無鉄砲と臆病の同居。そんな亮を速水組が温かく迎えます。

苦い苦い物語です。怖いです。
そんな物語を救ってくれているのは、父親であり、恋人の菜奈。特に父が亮を助けるシーンなどは涙、涙。ヤクザになりきれない亮を、じっと見守っているんです。

冒頭にいいましたが、暴力シーンは多々あり、気弱な私は、怖くてしょうがありませんでした。特に拷問シーンは思わず、口を押さえてしまいました(読んだ人しかわかりませんね)。
しかし、それを補う主人公の成長と青春の物語になっています。
裏切りと暴力の世界に速水組長は言います。
「親しいからといって、気を許すな。ひとを値踏みする時は、言葉じゃなく、行動を見ろ」
これ、最後にその意味がわかってきます。

怖いが、面白い。救いのない物語を、ぜひ、読んでみてください。
これぞ悪漢小説(ピカレスクロマン)と、わたしは思います。
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がらくた 江國香織

がらくたがらくた
(2007/05)
江國 香織

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<この関係は怖いでしょう。何ともいえない後味>

江國さんを再び読みました。うーん、何ともいえない味ですよね。とっても読みやすいですよね。しかし、問題は心に残る作品かなという点ですけど。不思議な作品でした。

海外のリゾート地のプライベートビーチから物語は始まる。美しい少女を見つめている美しい中年の女性。少女は美海、15歳。女性は柊子、45歳。やがて東京へ戻った二人を主人公に展開される意表を突く人間関係。官能をかき立て、知性を刺激し、情感を揺り動かす、江國恋愛小説の記念碑的長編の誕生。【新潮社HPより】


リゾート地プーケットを母子で観光していたとき、ふと美しい少女、美海と出会う柊子。物語はこの美しい観光地で始まります。美海の父に魅かれ、関係を持ってしまう柊子だが、柊子にはTV局のプロデューサーの夫がいる。その夫もまた愛しているという、柊子。

分からないお話でしたね。リゾート地で浮気はするは、かといって、夫が嫌いでもなく、むしろ人がうらやむような仲のよさ。夫も浮気しているが、そんな夫の素行も十分知っている。浮気を重ねる夫を丸ごと愛している。それも夫だからと。
そんな柊子と夫の関係が、怖いんですね。世の中、こんな夫婦もいるのかなー。まあ、愛の形は様々だけに、いいんでしょうけど、この関係はやはり、引くでしょ。行きつけのバーで、バーテンダーの肉体に見ほれる妻に対する、夫の仕打ちなど、やはり、この関係異常だと思えますねー。

そんな見た目はおしゃれで、大人の夫婦に、リゾート地で知り合った、美海が絡んでくるんです。美海は友達もなく、それを苦には思っていない。母と父は離婚。母は別の男にぞっこんで、美海もかまっていられない。自分の恋を満喫しているんですね。
そんな母を尻目に、美海は自分の生活や出会いの中で、徐々に柊子に近づいていくんです。それが意識していたものかどうかは分かりませんが、何だか、最初から狙っていたんでしょうね。
わたしは、見た目は仲の良い夫婦に対する嫉妬心かなとも思っていたのですが、真相は分からないまいものでした。柊子の母親と仲良くなったのも、自分の親との愛情に飢えていたからなのか、嫉妬なのか。どうも良く分かりませんでした。

そして。ラストはこれですか?これって、救われませんよね。45歳と15歳でしょ。いくら、相手がかっこいいと言っても…。何のために。この夫がまた良く分からない。そんな人間関係を淡々と、渇いた筆致で書いていくんですが、これが怖いんです。やはり、異常でしょう、これは。救いようのない夫婦と少女との関係なんですけど、結局何だっのか。

不思議な作品過ぎて、わたしは答えは出ません。きっと、誰にも答えは出せないんでしょうけど。
そんな愛情もあるのかなー。男女の仲とはこれまた不思議なものと思えるお話でした。
救いは、柊子の母。料理は「食べるもの」、洗濯や掃除は「させるもの」。子供の学校行事だの親類縁者の冠婚葬祭だのは、欠席するもの」という、暢気なおばあさんかな。これまた、変なのですけど、この人たちの中では、面白いキャラでしたね。
この渇いた物語をあなたは、どう読みますか?
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建てて、いい? 中島たい子 

建てて、いい?建てて、いい?
(2007/04/06)
中島 たい子

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<居場所が欲しい>

初読みの作家さんです。この作家さんも良かったですねー。文章も上手いし、ストーリーもなかなか読ませます。この方の作品、独特のテーマばかり。がぜん、注目の作家さんです。

独身女、家を建てる。30代半ばの独身女性はある日、重大な決意をする。それは、家を建てること――。仕事よりも、恋よりも、結婚よりも、家……それは正しい女の生き方ですか。
別れて1ヵ月以上たった彼から突然届いた「宅急便」。はたして中身は……?傑作短編「彼の宅急便」同時収録。【講談社HPより】


嬉しい事に予想に反して、面白かったです。内容は、↑のとおりなんですが、家を建てようとする過程が何とも潔く、カッコいいんですね。きっかけは、アパートの階段から転げ落ちたこと。そして、男と結婚すれば、こんな生活から脱出することができると、合コン、見合いなどをするのですが、上手くいかない。自分の居場所はどこなのかと迷ううち、「家、欲しいな」と思ってくるのです。
「空間に囲まれている、独立した建物。個体を専有して暮らす私」そう思った瞬間、今までの悩みが嘘のように晴れていきます。見合い相手の福島さんが、建築士だったこともあり、相談をするのですが、世界には居住するための素晴らしい家がたくさんあることを知っていきます。

「家族のための家もあるし、独身のための家もある。誰が建てたっていい」という福島さん。その言葉に目から鱗。建てる決心をする。「人が住むところ、私が住むところ、それが家」と。
これ、けっこう分かるんですね。なるほど、なるほど、うんうんと頷きながら読んでしまいますが、やはり、自分の実際の家を思ってしまいますね。理想の家を手に入れたいと思いながらも、なかなか手に入らないのが現実かな。

それから、寝かせてある、父の土地を譲り受け、いよいよ現実化していきます。
家族の反応も面白い。「何、バカなことをいっているのか」という雰囲気が、もう、自分が家を建てるかのようなミーハー気分。本当に人柱にしてやろうかという主人公に笑いました。

しかし、大変面白かったのですが、もう少し家が建つ過程とか、家のために頑張る真里の姿をもっと書いて欲しかったなー。そうすれば、もっともっと、共感できたかもしれません。

さて、もう一編の「彼の宅急便」もまた面白いです。別れた彼からの宅急便を待つ、心理描写が絶妙です。こちらも大変面白いですね。まあ、この展開ですから、ラストは予想できますねー。でも上手いですよ、これ。

初読みの作家さんでしたが、本当に上手いと感心しました。
自分の居場所は一体どこなんだろう。自分にとっての頑張れる下地は、どこなんだろうと考えさせられる作品でもあったのです。
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渋谷に里帰り 山本幸久

渋谷に里帰り渋谷に里帰り
(2007/10)
山本 幸久

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<負けるものか>

このところ、仕事が忙しくて、本読みも更新もままならなくなりました。疲れて、更新できない(泣)。
しかし、そんな時、この作品にめぐり合えて、良かった。山本さんの仕事系小説は本当にいいのです。

注目の若手作家が、渋谷を舞台に描く青春小説。渋谷は生まれてから小学6年生まで過ごしていた町。でも通っていた小学校は、すでに廃校。同級生の家を訪ねたが、そこは6階建てのビルになっている。しばらく散策するが、どうも過去との結びつきが見えずに、焦りすら感じる……。【NHK出版HPより】


↑この小説のあらすじがどうも不足しているようで、補足します。主人公は、峰崎稔。食品会社に勤めている32歳。無気力、無関心、国立大学出身ではあるがうだつのあがらない毎日。そんな時、異動の内示を受ける。よりによって、バリバリの女性営業ウーマン坂岡の後釜として。そしちぇ、1週間の引き継ぎを受けることになるのだが。

この小説、二つの柱があるとわたしは思います。一つは、会社での稔の立場なんです。ただ何気なく、過ごしていた彼に、突然、営業を命じられるという、心境と変化。そして、坂岡という絶対的な存在からの引継ぎ。仕事はこうであるというものを、この引継ぎで教わっていくというもの。
そして、もう一つは、営業で渋谷周りを担当になった時の、故郷への後ろめたさ。

前者は、お決まりものといったら、それまでだけど、後者のヱピソードを入れるところが、山本さんのすごいところですね。あろうことか、渋谷は東京にいながら、20年ぶりになる。そんな彼の渋谷への未練や、過去の出来事が挟み込まれます。
これも、お決まりなのでしょうが、やはり、故郷とはいいものだと思えてしまうんですね。東京のど真ん中の渋谷に生まれた稔。そして、渋谷を捨てざるを得なかった彼の後ろめたさと、久しぶりに周った時の郷愁。それが何と言っても、いいんです。故郷を離れて暮すこととは、どういうことなのか、そして、やはり故郷って温かいなーと思えるのです。

前後しましたが、主題の仕事。まあ、お決まりなのでしょうが、やる気のない主人公が、徐々にやる気になっていく。それが、またいいんですね。こういう小説にわたしははまりやすい。これ、会社員には良く分かりますねー。ちょっとした変化が今までにない、自分を目覚めさせる。そして、自覚していくんですね。
坂岡が築いてきたもののん責任の重さ。そういう仕事を任されたとき、自覚が生まれていくんです。
しかし、坂岡がなぜ自分に引き継いでいったのか、それは
「稔が大失態をした時、会社ははじめて自分の存在を認めてくれる」というものです。
そのとき、稔に「負けるものか」という気分になるんですね。
これ、自分の会社の人間関係にも当てはまるんですよ。せめて、わたしがもう少し若ければなー。

ということで、とにかく元気が出て面白い。稔だけでなく、坂岡さんも8時半の女、優里も。そして、取引先の面々も。なかなか味があって。
「ホットパンツ」にわたしも行きたいなー。これ、この話のミソです(笑)。
やはり、山本作品は面白い。
新作も出るらしい(出た?)ので注目します。
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しずく 西加奈子 

しずくしずく
(2007/04/20)
西 加奈子

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<テーマは女どうし。笑えて切ない6つの物語>

久しぶりの西加奈子さんです。『通天閣』を読んで以来、一年ぶりでしょうか。と、思っていたら、新作の発売。それも2ヶ月連続刊行というから、西ファンにとっては嬉しいですね。テーマは「女の生きる道」だそうで、これは楽しみです。

十年ぶりぐらいで偶然再会した幼なじみ。なぜか彼女と二人で、ロスへ旅行することに(ランドセル)。会えば殺意を覚える相手、マリ。三十四歳の私にできた、バツイチだけど素敵な恋人の、七歳の娘だ(木蓮)。私たちは弱くて、かっこ悪くて、情けなくて。それでもきっと、大丈夫――。少し笑えて、結構せつない、「女どうし」を描く六つの物語。『さくら』『きいろいゾウ』の著者、初の短編集。【光文社HPより】


この短編集は著者初の短編作品集。「さくら」の感動や「通天閣」の構成の上手さを期待すると、ちょっぴり物足らないかも。しかし、この作品集はとっても味のある、短編集だったのです。

「ランドセル」…小学校の幼馴染と偶然再会し、勢いのまま、疎遠になるが30歳を越えたある日、二人は偶然再会する。勢いのままロサンゼルスに一緒に旅行をすることに。大人になって、忘れていた思い出が蘇ってくる。
「灰皿」…長年連れ添った夫を亡くしたおばあさん。、思い出のある家を貸し出すことになった。入居してきたのは小説家。おばあさんと若い女性を描いた作品です。
「木蓮」…なぜか彼と元妻の娘を預かることになった。この娘がどうもかわいくない。どうにかこうにか感情を抑えつつ、付き合うも最後に爆発させることに。
などとっても優しい話が6話。

表題作はその中でも、少し違うようですが、いちおう女同士の話。いろんな形の女同士が描かれています。幼なじみ、老人と若い女性、親と子、友だちなどなど。どれも、いいですねー。
西さんの面白いのは、会話が絶妙ですね。「灰皿」の若い小説家小説の内容は引きましたが、若い女性の話を聞くうち、亡き夫との思い出がよみがえってくるくだりなど実に上手いです。そして、ジーンと来るんですね。

私が好きなのは、「木蓮」。憎まれ口ばかりで、全然可愛くないんですよね、この子。しかし、ある言葉をきっかけに自分の幼い頃の思い出がよみがえります。そして、ラストはうまいです。絶妙だとわたしは思いますね。それにしてもこの作品、わたは可笑しくて何度も吹いてしまいました。この娘にハラハラさせられる、心理が絶妙ですね。

最後の「シャワーキャップ」もなかなか、いい。母と子の関係が実にいい。性格も違い、母の行いにイライラする子。しかし、そんな母親が憎めないし、好きな主人公。やがて、父との若い時の日々が語られ、自分の今の悩みが少しずつ、ほぐれてくるんですね。

こんな「女どうし」の関係を可笑しく、切なく描いています。どの作品も粒揃い。長編もいいですが、短編も上手いです、この方。
カバーデザインもとっても可愛いですよね。作品もカバーにピッタリとして、思わず、にやりとなります。
優しく、笑えて、ちょっと切ないこの短編集。
西加奈子という作家を知るのはこの作品からでもいいでしょう。ぜひぜひ。
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タルト・タタンの夢 近藤史恵 

タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)
(2007/10)
近藤 史恵

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<ヴァン・ショーは、いかがですか?>

近藤さんは『サクリファイス』に続いて、二作品目の読書。『サクリファイス』は自転車ロードレースを扱ったスポーツミステリだったのですが、こちらはフレンチ・レストランを舞台にした料理ミステリ。幅広い作家さんです。そんな近藤さん尾この作品の味はというと。

下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。風変わりなシェフのつくる料理は、気取らない、本当にフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。そんな名シェフは実は名探偵でもありました。常連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか? 甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相は? フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?……絶品料理の数々と極上のミステリ7編。【東京創元社HPより】


「ビストロ・パ・マル」は下町の片隅にある小さなフレンチレストラン。カウンター七席、テーブルは五つ。店の名は「悪くない」という意味。シェフの三舟さんは、フランス修行中、「三船敏郎の親戚なのか」と聞かれたりするので、無精髭と後ろで束ねる髪型をしている。従業員は、このシェフと料理人の志村さん、ソムリエの金子さん、そして、ギャルソンのぼくの四人。こじんまりとした店ではあるけど、味は絶品。こんな店に行ってみたいよなー。
ただし、このフランス料理。やはり、めったに行くことのないわたしは、その料理の知識を披露されても、ピンときませんでした。確かに美味しそうではあるのですが。あまりなじみがないからですよね。もっとも、こんな店が近くにあれば、この店の常連客のように毎日とは、いかないまでもいきたくなりますねー。

さて、料理は絶品のこの店のお話ですが、これまた絶品。
どれも、しみじみいいお話が七話といおうか七食といおうか。私が好きなのは、クリスマスイヴに料理人志村と歌手である彼の妻を招いて、ディナーショーを開き、志村と奥さんの出会いの話がいいんです。もちろん、料理はちゃんと出てきます。クリスマスらしいいいお話でした。

「ぬけがらのカスレ」も好きですね。ある女性作家が若い時にランス留学中に出会った男性と誕生日の前夜に食べた、カスレ。それは、何ともお粗末なお料理で、彼を残し、日本へ帰るための決意をすることになる。そしてその真相は、実は。これも好きで、最後はちょっと涙も。

そして、最後の「割り切れないチョコレート」はデザートに出したボンボン・オ・ショコラに不満な男は、シェフに文句をいう「せっかくの料理が台無しだ」と。その男はチョコレート専門店のオーナーだった。その男の店に行って、チョコレートを買うことにしたのだが、数は23個。この店のチョコレートは5、7、11、13という素数で、箱詰めされているのです。
この話もとってもいいです。この素数を選んでいるのはちゃんとわけがあるんですね。

その他の話もいいです。もちろん、フランス料理も紹介されていて、イメージが湧かないなりに美味しそうでした。しかし、一番美味しそうなのは、謎を解いた後にシェフが出してくれる、ヴァン・ショーという飲み物。ワインにクローブ、オレンジ、シナモンを入れ温めたもので、とっても暖まるのだそうです。これが一番、欲しい。

それにしてもこんな店があったらいいなー。そして、言われてみたい。
「ヴァン・ショーはいかがですか?」なんて。
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相棒 五十嵐貴久

相棒相棒
(2008/01/12)
五十嵐 貴久

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<あの二日間、確かにおれたちは相棒だった>

五十嵐貴久さんという作家さんは、とにかく楽しめる作品を出してくれますね。わたし、まだ2冊しか読んでいませんが、とても面白く読みました。設定がとにかく面白い。この作品のタイトルからして、TVの「相棒」シリーズを連想してしまいますが、TVより面白いかも。

時は幕末、京の都―。徳川慶喜暗殺未遂事件の犯人探索のコンビ、龍馬と土方に与えられた時間は、わずか二日間。いがみ合い、衝突しながら捜査を続ける二人が最後に行きついた人物とは誰なのか?そして、龍馬暗殺。その真相を知った土方は?幕末維新のオールキャストでおくる、感動のエンタテインメント長編小説。【BOOKデータベースより】


大政奉還を八日後に決めた朝、将軍慶喜は西郷と密かに会談するため、二条城を出るが、途中襲撃される。一体誰が何のために。老中、板倉と若年寄永井は二条城に男二人を呼び寄せて、犯人探しを依頼するのです。その二人とは、火と油の敵同士、坂本竜馬と土方歳三。お互いがお互いのために、犯人を捜すことになるのです。
いやー、この設定がまず面白いですよね。幕府を倒すために奔走した坂本と、幕府を護るため新撰組という組織を護った土方。まさに火と油。そんなふたりが犯人を二日間で探せと命じられるのですが。
どこから、探ればいいのか…。

例えば薩摩の西郷隆盛に会いに行ったり、会津藩に乗り込んでみたり、長州の桂小五郎に会いに行ったりと、お互いがその持分の中で探り合っていくのです。しかし、結果は否。時間は少なくなるは、二条城にその都度呼び出されて、報告を求められるは、二人は次第に追い詰められていきます。そして、二人がたどり着いたのは。

二人が互いに認め合っていく過程がなかなかいいんですね。
土方が「坂本という男は実に嫌な野郎ですな。しかし役には立つ。…この男がいなければ、この男の機転がなければ…ここへもどってくることさえできなかった」と報告すれば、分かれるときに坂本は「わしゃ、あんたのことが嫌いではない…また会いたいもんじゃの」と土方にいいます。この辺の坂本と土方の性格の違いがまた面白い。

とにかく歴史好きには、にやりの一冊ですね。実はわたし、竜馬好き。「竜馬がゆく」は3回読みました。ドラマ新撰組は通しで一年間見て、司馬遼太郎先生は今でも、師と仰いでおります。そんなわたしが、この作品を読むのは必然的だったかも。楽しんで読めました。幕末のオールキャストもまた楽しい(まだまだ沢山いるのですが、ほぼ登場)。

とここまでは、歴史好きな方が楽しめると書いたのですが、それだけではなく、誰もが知っている、あの事件。大政奉還後に暗殺される坂本竜馬。それさえもこの作品は書いています。
これを書いてしまったら、ネタバレになってしまいますので、書けませんが、驚かされます。そして、一方の土方は…。これがまたいいんです。

ここまで楽しめる作品を書いてくれた五十嵐さんに感謝。幕末エンターティメントの快作です。竜馬と土方の絶妙な会話がとにかく楽しかった。
五十嵐さん、次はどんな小説で楽しませてくれるんですか。
楽しみな作家さんがまた増えてしまいました。
コンテントヘッダー

2月に読んだ本

早いもので、三月に突入ですね。
2月は、われながらよく読んだものだと感心。↓13冊読み上げました。

10.ブラック・ジャック・キッド 久保寺建彦
11.ぼくのメジャースプーン 辻村深月
12.秋の牢獄 恒川光太郎
13.午前三時のルースター 垣根涼介
14.家日和 奥田英朗
15.プリズム 野中 柊
16.号泣する準備はできていた 江國香織
17.いっぺんさん 朱川湊人
18.セ・シ・ボン 平安寿子
19.相棒 五十嵐貴久
20.タルト・タタンの夢 近藤史恵
21.しずく 西加奈子
22.渋谷に里帰り 山本幸久

では、2月のマイベスト。
何といってもこの作品ですね↓。おかしくてもほのぼのとして、それでいて現実を考えさせられる作品でした。

家日和
家日和

次点はこの作品↓。
とにかく変な設定が得意な作家さん。エンターティメントに徹したその筆の冴え。お見事。歴史小説好きにはたまらない1冊ですね。

相棒
相棒

その他、辻村さん、野中さんの作品。山本さんの新作も印象的でした。
来月は早くも当月までのマイベストを載せます。何せ忘れっぽいもので。
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よし

Author:よし
本好きですが、読むのは遅いです。読書メーターやってます。

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