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セ・シ・ボン 平安寿子

セ・シ・ボンセ・シ・ボン
(2008/01)
平 安寿子

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<そりゃもう、素敵>

やっと画像が表示されました。長かったですねー。平さんの作品だけにとっても読みやすく、やはり元気が出てくる作品でした。今年は平さんの作品にはまりそうな予感がします。

生き迷っていた若いタイコが、留学先のパリで出会った、風変わりな人物、おかしな出来事。笑って、あきれて、やがてしみじみとする、調子っぱずれの留学物語。【筑摩書房HPより】


この作品は、28年前に平さん自らが、語学留学でパリに3ヶ月間滞在した時の体験エッセイです。本のタイトルから行くと、とても素晴らしい体験で、かけがえのない人との出会いがあって…、などということを予想して読んだら、大間違い。この3ヶ月、フラストレーションとストレスに苛まれた日々だったというからおかしい。
しかしながら、滞在したホームステイ先の夫婦を始め、各国から集まった風変わりな留学生達との、温かい交流がやはりいいんです。

ホームステイ先の夫婦は、とても正反対の性格。夫は浪費家のボンボン。妻はしっかり者で倹約家。そんな妻は夫のことをこういいます。
「小さな欠点しかない男には、小さな長所しかないわ。大きな欠点のある男には、大きな長所があるのよ」
なんと名言。そして、平さんはこう続けるんです。「男の大きな欠点が許せない女もまた、小さな長所しかない甲斐性なしである」と。序章からこんな調子でパリで出会った人たちとの話が続きます。

アメリカからやってきたプリシア、一緒に同居することになる、イギリス人のグラハム。謎の日本人、イラン人などなど。そして、ちょっぴりのロマンスもあったりして、とっても貴重な体験をされているんですね。
しかし、平さんはこの留学をこういいます。
「パリは特別な街ではない。特に愛着はなく…あそこで会った人たちが今どうしているのか、興味はない、会いたくもない」
そんなパリの出来事をなぜ今になって書く気になったのかというと、年を経て、気付くんですね。
「生きるとは思い出すこと。人は思い出すために生きる…パリでの日々が今のわたしの足元を支える土台になっている」と。
これまた名言。

考えて見ると、自分の土台はどこだろう。平さんのような留学もしたことないし、冒険もしたことがない私。しかし、土台はあるんですねー。若かった頃の体験ですねー。それは人との繫がりであったし、自分の成長をさせてくれたと思っています。
そう、やらないよりやったほうがいい。それが決して楽しいものでもないにしても。それが、土台になるとしたら、人生捨てたものではないでしょ。
そう、平さんは教えてくれています。「そりゃもう、素敵」と。
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いっぺんさん  朱川湊人

いっぺんさん (いっぺんさん) いっぺんさん (いっぺんさん)
朱川 湊人 (2007/08/17)
実業之日本社
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<願いは必ず叶う。ただし、いっぺんだけなあ>

久々にノスタルジックホラーの名手、朱川さんの新作を(ちょっと遅れましたが)読みました。まさにノスタルジックホラーという感じの作品で、やはり、いいなあ。ホラー嫌いの人にもこんなホラーなら読めるのでは。懐かしい香りのする8つの話です。

『花まんま』の直木賞作家が描く命と友情と小さな奇跡の物語。田舎で出合った8つの不思議ストーリー。【BOOKデータベースより】


何といっても表題作「いっぺんさん」がいいですね。友人のしーちゃんといっぺんしか願いを叶えない神様を探しに山に向う。やっとたどり着いた先で願い事をする二人だが。そこから急展開します。二人は、どんな願い事をするのかというところが、この話のキモなんですが、主人公の少年の願い事が、予期せぬことで叶うことになります。そこが、感動するんですねー。短編なので、それもホラーとミステリの融合している作品なので、このぐらいしか書けないのが残念。

鳥がおみくじをする手伝いをする少年。ヤマガラのチュンスケとの交流を描く「小さなふしぎ」もいい。これ昔、どこかで見た鳥の芸だよなー。そして、時代の背景がとっても朱川さんらしいんです。『わくらば日記』にも同じ様な感想を持ったんですが、戦争が終わってからの時代をしっかり、背景にしています。そういう背景だからこそ、チュンスケと少年の交流が心に沁みるんですね。

ホラーだから当然怖いです。『コドモノクニ』の四つの話の怖さ。これ恐怖の四季ですよね。決して、子供達に聞かせられない。昔話をモチーフに朱川流のホラーです。
その他、不思議な村にたどり着き、快楽にふける青年の話「逆井水」。とっても不気味な話「蛇霊憑き」。一転、悲しい物語「八十八姫」など、まさに朱川ワールド全開です。

やっぱり、朱川ホラーは心に沁みる。「いっぺんさん」があまりに良くて、他の作品が少しかすむ気もしますが、様々に楽しめました。
あっ、裏表紙にもちゃんと仕掛けが。これがまた感動するんです。

ぜひぜひ、このノスタルジックホラーの秀作を読まれることをオススメします。
また『花まんま』を読みたくなりました。
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08図書館に行こう(5)

さて、新作含めて借り出せました。今回は、何といっても五十嵐さんの『相棒』ですね。『いっぺんさん』も。実はこの2冊は早々と読了。特に、『相棒』は面白かったですねー。また、後日UPします。

いっぺんさん (いっぺんさん)東京物語 (集英社文庫)ランナー相棒
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号泣する準備はできていた 江國香織 

号泣する準備はできていた (新潮文庫) 号泣する準備はできていた (新潮文庫)
江國 香織 (2006/06)
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<現実と過去の一瞬を切り取る短編集>

えー、恥ずかしながら実は初の江國作品。前々から気になっていたのですが、どうも読まず嫌いのところがあって、敬遠していたのですが…。一作では分かりませんが、わたし、この作者の空気と言うか、世界観というか好きですねー。

私はたぶん泣きだすべきだったのだ。身も心もみちたりていた恋が終わり、淋しさのあまりねじ切れてしまいそうだったのだから―。濃密な恋がそこなわれていく悲しみを描く表題作のほか、17歳のほろ苦い初デートの思い出を綴った「じゃこじゃこのビスケット」など全12篇。号泣するほどの悲しみが不意におとずれても、きっと大丈夫、切り抜けられる…。そう囁いてくれる直木賞受賞短篇集。【BOOKデータベースより】


この作品の感想を書くのに、一体どう書けばいいのか迷いました。それだけ感想が難しい。読んでどう捉えたかではないんですね。ではどう感じたか。これも難しい。結局、過去と現実の一瞬の風景を女性の視点から捉えた作品集だといえます。わたしは嫌いではないです。ふわふわした文体とでも言うのでしょうか、それも特徴的ですよね。

書く前に幾つかの書評を参考にしたのですが、これだとやはり感じてしまいます。つまり、この作品で言えば、その浮遊感よりも、女性の怖さ…というか、結局は人間の怖さということになるんではないでしょうか。ふわふわとした文体の裏にあるものは、一瞬に切り取った人間の心理だと思います。

12編の短編集ですが、お気に入りは表題作だろう。愛し合った男とは半年前に別れた。ある朝、電話がかかってくる。姪を習い事に連れて行く合間に昔のことを思い出す女。外国を旅した頃よく墓地を散歩していたという。そして思うのだ「号泣する準備はできていた」と。それでも別れられない心理描写、いいですよね。でもやはり怖いなー。

浮気をしているらしい夫がお気に入りの下着を着ていった。それを思い出し夕食を作る「住宅地」。、愛する人と別れた主人公が、かって関係があったこともある男友達に抱き寄せられて泣き出すかわりに笑い出すという「手」。

日常のひとコマを切り取る手腕とその中の非日常の心理描写を丹念に描いているといっていいのではないでしょうか。そして、また日常に戻っていく主人公達。その描写が静々と淡々と書かれているのです。これって、怖いですよね。

女性心理というだけでは済まされない、人間の心の襞。記憶に残っている、嫌なものを描いているこの作品はやはり江國作品の特徴なのかもしれませんね。
そんな江國さんの代表作である本作品。わたしは普通の恋愛小説と思っていたので驚きました。
静かに、淡々と、日常を非日常を、過去を切り取るこの作品。やはり、人間ドラマというか、自分の人生のひとコマもどこかにあるような気がしてなりません。
また江國作品に挑戦します。
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プリズム 野中 柊

プリズム プリズム
野中 柊 (2007/06)
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<大切なものほど、こわれやすい>

何だかバレンタインデーを境に無性に恋愛小説が読みたくなるから不思議。この作家さんも初読みです。典型的な不倫小説といったところなのですが、この作家さん、じつに展開が早く読ませる。読者を引き込む力量があると、わたしは見ています。

大切なものほど、こわれやすいのだろうか。たとえば、優しい夫のいる温かい家庭。でも、私の心はもうそこにはない。始まりは理由もなく、きっかけがあっただけ。私は通う。あの人の部屋へ。恋しい人は夫の親友だった……。三十代の女性が迷い込む、愉悦と裏切りの世界。身に覚えがないとは言わせない、スリリングな恋愛小説。【新潮社HPより】


冒頭にも書きましたが、実にこの作家さん、物語に引き込ませる力量がある作家さんですね。展開がスピーディー、それは短いセンテンスを使い、主人公の心の葛藤を描いているからでしょうね。だから、読み手にその感情がストレートに伝わってきます。
例えば、こんなところがあります。
「時は流れる。音もなく。とどめようもなく。」ね、何となく上手いでしょ。

物語は、母の葬儀後の片付けから、始まります。
帰るところを失った主人公。なぜかというと、母と父は離婚。それぞれが再婚していて、子供もいる。主人公波子は、8才下の弟と13才下の妹がいる。優しくまじめな医者の夫と結婚もしている。と、家族小説のような展開ですが、これが不倫小説。何と波子は、夫の親友の高槻さんと不倫をしている。しかし、その代償は?
という、ベタな展開なんですが、わたしは飽きることなく読み終えましたね。

この家族の環境が、波子を救い出してくれるんですね。ラストの梨香が持ってきたプリズム。不覚にも泣いてしまいました。
そして、夫を決して責められない、自分。その心の葛藤が、何ともいい感じで書かれています。そして、ラストの決意。

女性作家さんだよなー。書き方や道具の使い方。そして料理ずきなんでしょうね。随所にでてくる料理シーンが、とっても美味しそうで。
ただ主人公が不倫相手と別れる決心をするところがもう少し、丁寧に描いて欲しかった気もするんですけど、まぁ、それはいいでしょう。
ありあまるテクニックとラストで補っているとわたしは、思います。
またお気に入りの作家さんができました。
ただ、バレンタインデーには読む本ではないようです(笑)
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家日和 奥田英朗

家日和 家日和
奥田 英朗 (2007/04)
集英社
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<あなたは一体どのタイプ。抱腹絶倒の在宅小説>

久しぶりの奥田さんの作品ですが、笑いましたね。やはり奥田さんの作品はいいなー。今、この手のユーモア小説は、荻原さんか奥田さんのものですよね。奥田さんの方がアクは強い気がする。そこがまたいい。

ネットオークションにはまる専業主婦。会社が倒産し、主夫となる営業マン。夫と妻。ちょっとずれていて、でも愛情がないわけでなく…。ずっと外にいた夫の王国か。ずっと家にいた妻の城か。ビター&スウィートな「在宅」小説。【MARCデータベースより】


いやー、面白かった。あっという間の一気読み。痛快な読書でした。奥田さんはやはり、上手いですね。この手の小説を書かせたら、ピカイチ。それは伊良部先生シリーズで証明されていますけど。
でもこの作家、ユーモア小説だけではないところがすごいのです。『サウスバウンド』『最悪』『ガール』など実に幅広い作風を持っておられます。そういうところは、これまた私の好きな荻原浩さんに良く似ておられますね。本当に面白いので、早く新刊出ないかと期待させてくれる作家さんです。前置きはさておき、内容ですね。

『サニーデイ』はネットオークションにはまる主婦の話。オークションで次々と不要なものは売りさばき、どんどんはまっていきます。やがて、夫の大事なものまでも、最後はホロリです。
『ここが青山』リストラに遭い、主夫業に専念することになった夫ですが、これがどうやら、合っていたよう。妻はこのときとばかり、働きにでます。こんな夫婦もありで、いいよなーと思える作品です。主婦業も楽ではないんだけど、家もいいでしょうと思えてきます。
『家においでよ』は妻が出て行ったあと、自分の部屋ができたと、次々と自分の好みに部屋を変えていく男の話。これまた、最後がいいんです。

などなど、ユーモアのセンスが実に良く、笑えるんです。ただ笑えるんじゃなく、最後はほのぼのときます。家もいいじゃないと働いているわたしにとっては思えてくるんですね。
そして、ネットオークションにはまる過程などから、あっ、ここにもわたしがいる。次々に自分の城を築いていく男の話などは本当にうらやましい生活だよなー。だからといって、今の生活に不満があるわけじゃなく(笑)。

誰もがふと思う日常の一端を、奥田さんは実に上手く話を作られますね。感心しました。
そして、皮肉。ロハスの生活を描く『妻と玄米御飯』には大笑いでした。こういう生活している人もいるんでしょうね。実に窮屈だよな。良かった興味がなくて。『グレープフルーツ・モンスター』は少しやりすぎかな。まあ、これはご愛嬌。
どの作品も実に面白い。

家っていいなーと本当に思える作品です。さあ、あなたはどのタイプ?奥田流在宅小説にはまってください。オススメします。
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08本屋さんに行こう(1)

久しぶりに近くの本屋さんに行ってきました。
今回は買うことに決めていたので、↓2冊購入。

少女には向かない職業 (創元推理文庫 M さ 5-1)セ・シ・ボン

桜庭さんの作品と平さんの新作が欲しかったので、すかさず購入。
その他、満遍なく見ていたら…

福袋

角田さんの新作「福袋」発見。買おうか迷った挙句、泣く泣く断念。
その他、「もっとすごい、このミステリーがすごい」、王様のブランチで特集していた勝間さんの「効率が10倍アップする新・知的生産術」を立ち読み。

もっとすごい! このミステリーがすごい! [別冊宝島1503] (別冊宝島 1503 カルチャー&スポーツ)効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法

しかし、わたしが最も気になったのは、芥川賞作家川上未映子さんの↓
先端で、さすわさされるわそらええわ
先端で、さすわさされるわそらええわ

これ、インパクトありすぎるでしょ。注目します。
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秋の牢獄 恒川光太郎  

秋の牢獄 秋の牢獄
恒川 光太郎 (2007/11)
角川書店
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<明日という希望がなくなる絶望>

この作品は、恒川さんの三作目。独特の異次元空間と文章が実に綺麗で、一作目の『夜市』からのお気に入りです。二作目は未読ですが、いまいち評判がよろしくないようなので、手がつかなかったのですが、三作目を読んでみて、なかなか力作。やはり、この人の世界観はわたしは、好きです。

11月7日、水曜日。女子大生の藍は、秋のこの一日を何度も繰り返している。毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人……。何のために11月7日は繰り返されているのか。この繰り返しに終わりは訪れるのか?【角川書店HPより】


表題作のあらすじは↑のとおり。収められている作品は、三作。他に
移動する家を守るのは選ばれた者、誰かを欺いて、引き込むしか逃れられないという「神家没落」。
不思議な力、幻術を持つ祖母に育てられたリオ。子供から大人へ、さまざまな人と出会い、到達する境地を描く「幻は夜に成長する」。
どの作品も不思議な異空間世界を描いています。

共通するのは、その世界に閉じ込められる、環境であったり、心理であったり、まさに「牢獄」を描いています。
「幻は夜に成長する」を好きな方も多いとは思いますが、わたしは表題作が好き。突然、同じ日を過ごすことになった女性の不安が次第に絶望に変わる流れと、同じ日を過ごす、仲間との遭遇に怖さと明日の来ない絶望感が本当に怖いですね。
考えてみれば、明日が来るから、希望がでてくるし、「よし、頑張ろう!」となるのですが、明日が来ないと分かった日から、こりゃ絶望でしょう。そんな心理が実に怖かったです。
しかし、ある日一人ではないということに気付くんです。この作品で言うリピーターがたくさんいる。同じ仲間を見つけてゆくんです。そこに希望があるんですね。そして、脱出する唯一の希望は北風伯爵に連れて行かれる。
その後、戻れるかどうか分からないのですが…。

とにかくこの表題作にやられ、「神家没落」、「幻は夜に成長する」の印象がちょっと薄れてしまったというのがわたしの感想です。もちろんこの二作も素晴らしく、怖いです。
「牢獄」にとらわれた人を描くこの美しく怖い世界を是非、堪能してください。

それにしても、カバーを描いている、ミヤタジロウさんの装画が実に素敵ですねー。恒川さんの作品はこの人が描いているのかなー。いやーこれにもやられた。注目します、わたし。

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午前三時のルースター 垣根涼介 

午前三時のルースター (文春文庫) 午前三時のルースター (文春文庫)
垣根 涼介 (2003/06)
文藝春秋
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<ベトナムで失踪した父を探す、少年とおれ。垣根涼介の一番鶏>

積んでいた、垣根涼介さんのデビュー作を読みました。デビュー作とは思えないスピード感溢れる展開。痛快すぎます。それでいて、ほろ苦さも残るなんて。こんなことなら早く読めばよかった。

旅行代理店に勤務する長瀬は、得意先の中西社長に孫の慎一郎のベトナム行きに付き添ってほしいという依頼を受ける。慎一郎の本当の目的は、家族に内緒で、失踪した父親の消息を尋ねることだった。現地の娼婦・メイや運転手・ビエンと共に父親を探す一行を何者かが妨害する…最後に辿りついた切ない真実とは。サントリーミステリー大賞受賞作。【BOOKデータベースより】


垣根さんのデビュー作です。この作品でサントリーミステリー大賞受賞。なかなかの痛快な冒険小説に仕上がっています。何より、展開がいい。失踪した父親を探す、少年のためにベトナム行きを計画する長瀬。少年のただならぬ事情を聞き、相棒の源内を引き連れ、いざベトナム行。果たして父と子は再会できるのか。なぜ、父は失踪することになったのか。

これは、冒険小説の手法ですよね。この長瀬、ただの旅行代理店の営業マンとは思えない、知能の持ち主なんです。いろんな局面を持ち前の知能で切り抜けていくんです。また、ベトナムでの行動のため、娼婦メイとタクシーの運転手ビエンを雇い、父親探しをしていきます。
ただものではない長瀬の過去については、一切触れられてはいませんが、ビエンやメイを雇う下りは、何かしらの過去を持っているようです。わたしとしては、もう少し掘り下げていって欲しかったなー。

相棒の源内がまたいいんですが、これまた動機が少し弱い。お金が余りあまっているために友人を手助けするというのも、何だかなー。
まっ、この辺はデビュー作ということで差し引いても、ビエンやメイがとてもいいんです。お金のためだけではなく、長瀬という人物に引かれ、協力していく二人。

少年が父親の真相にたどり着いた時、あまりにもな残酷な事実が分かります。祖父から会社の跡取りを約束された少年。母は政略的に再婚。結婚相手には連れ子もいるため、将来は苦難が予想されます。しかし、そんな境遇を受け入れていく、少年。このベトナム行が彼を一回りも二回りも成長させます。そんな少年を描いたラストシーンを見よ。
このシーンだけで、読んで良かったと思いました。

現実のベトナムはこうなのか、疑問ですが、それを差し引いても、痛快に躍動感を感じるこの作品。まさに垣根さんの記念すべき一番鶏です。
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08図書館に行こう(4)

少し前ですが、図書館に行ってきました。
今回は少な目の3冊。今回は読めそうなのですが、積読本に手を出してしまったので、無理かなー。どれも粒揃いです。

家日和プリズムワーキング・ホリデー
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ぼくのメジャースプーン 辻村深月

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス) ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)
辻村 深月 (2006/04/07)
講談社
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<少女を救うために計る、罪と罰の重さ>

この作家さんも初読みでした。今年は初読みがなぜか多くなりそうです。しかし、この作家さんは非常に注目されていて、その評価は高いですね。わたしも重い腰をやっと上げて読みましたが、期待通りの面白さ。上手いですねー。こりゃ、今年は辻村さんにはまりそうです。

忌まわしいあの事件が起きたのは、今から三ヵ月前。「ぼく」の小学校で飼っていたうさぎが、何者かによって殺された…。大好きだったうさぎたちの無残な死体を目撃してしまった「ぼく」の幼なじみ・ふみちゃんは、ショックのあまりに全ての感情を封じ込めたまま、今もなお登校拒否を続けている。笑わないあの子を助け出したい「ぼく」は、自分と同じ力を持つ「先生」のもとへと通い、うさぎ殺しの犯人に与える罰の重さを計り始める。「ぼく」が最後に選んだ答え、そして正義の行方とは。【BOOKデータベースより】


ここから、この作品を未読の方は、お気をつけ下さい。多々、ネタバレが含まれます。

仲良しのふみちゃんとウサギのエサやり当番を病気のため、替わったために負ってしまう心の傷がポイント。ウサギが無残に殺されてしまいます。このシーンはちょっとショッキングで、読んでいて、重たくなりました。それほど、残酷なんですね。
その残酷なウサギ殺しを目の当たりにしてしまうふみちゃんは、事件後、まったく心を閉ざしてしまうんです。ここから、ぼくの闘いが始まります。

もう一つの大切なポイントは、「ぼく」が「条件提示ゲーム」という特殊能力を持っていること。どうやら一族に脈々と伝わっている能力らしく、一人に一回しか使うことができない。この能力を使い、ウサギ殺しの犯人に罰を与え、ふみちゃんの心を取り戻したいと考え始めます。幼い小学四年生の心に罪と罰がのしかかります。

この能力のを使うために、同じ一族の教授である叔父さんを訪ね七日間にわたる、カウンセリングとノウハウを学びます。少年の出した結論とは何か。こうして、ラストまで行くんですが。
重いんですよね。罪と罰とは何かを読者に突きつけてくるんです。
「復讐」の連鎖は憎悪を生むためのものである。悪意は誰の心に潜むものであるとか。あなたならどうしますか?と突きつけられるんです。

昨今の幼稚園や保育園では、動物を飼わなくなっているとも書かれていましたね。人間の悪意によって、殺された動物。それが児童に説明がつかないからだそうです。分かるよなー。昨今、動物虐待が多いんですよね。そして、それを煽るかのような有害サイトというのも蔓延していますから。死というものが、希薄になっているこの現在の状況をどう考えたらいいんでしょう。

自分だったら、こうするなーと考えながら、一人ひとりが結論を最後に出してください。別に出せなくても構わないんですが。そんな、重い本なんですが、ここまで読ませる力量はこの作家、ただものではないです。

一級の心理サスペンスをぜひ。さて、次はどの作品を読もうかな。
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ブラック・ジャック・キッド 久保寺健彦

ブラック・ジャック・キッド ブラック・ジャック・キッド
久保寺 健彦 (2007/11)
新潮社
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<ブラック・ジャック大好き少年の冒険と青春>

今、話題の売り出し中の作家さん、久保寺さんの第19回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。そして、次の「みなさん、さよなら」でパピルス新人賞受賞。乗りに乗っている作家さんですね。さて、そんな作家さんの作品の感想は…

ブラック・ジャックになりたいおれと、『ガラスの仮面』を教えてくれた内気な宮内君。そして、眼鏡を外すと超綺麗な泉さん。イブの晩、駅の向こう側の見知らぬ街に姿を消した泉さんの弟・健太を捜して、三人の大冒険が始まった――。ドラマ原作大賞選考委員特別賞、パピルス新人賞同時受賞に輝く、驚異の超大型新人登場!【新潮社HPより】


ファンタジー大賞受賞作だけに、どんな話かと思ったのですが、「むむ、普通の小説」ではないですか。マンガ「ブラック・ジャック」をこよなく愛する少年の成長小説の趣が強いかな。

ご存知のとおり手塚治虫の「ブラックジャック」はマンガの傑作。わたしも、全巻とはいかないまでも、読みましたとも。凄腕の外科医、クールで現実的、優しい一面を持ち合わせた、「ブラックジャック」に痺れたものです。そんな「ブラックジャック」を心酔した少年の、小学校時代が書かれているんですが、「ブラックジャック」が嫌いな人は辛いかもですね。わたしは、第〇〇話ではという解説でこの作者、このマンガを全巻読破し、熱烈な手塚治虫ファンと読みました。そういうところは、大好きで興味深く読むことができましたね。

話自体も悪くは無いんです。父と母の諍いと、学校生活、ケンカ、そして両親の離婚、母との別れといい感じなんですが…。途中の川べりに現われるめぐみちゃんとの話は、なくても良かったのではないかなぁ。いまいち分からないんです。物語自身の中の影響も。それ以外の話が、結構面白いのに、もったいないような。

後半に友だちになる、宮内君と泉さん。これは良かった。本好きでマンガ好きな二人と友だちになり、クリスマスの日に冒険をします。そこはファンタジーかな。ここらあたりが、本読みの心をくすぐるんですね。さまざまな作品も紹介されて。

前述のとおり、一部ムムムのシーンはありましたが、全体としてはまずまず良かったです。ましてやデビュー作なら、その感は強くなりますね。次も読みます、わたし。

さて、この主人公の少年のあだ名が「アッチョン」。
これがまた手塚治虫ファンならピンと来るはずですよね。
「手塚治虫は偉大な作家だね」と出てきますが、まさに同感。
余談ですが、この話の「しゃー、しゃー」が頭から離れない(笑)。
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ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎

ゴールデンスランバー ゴールデンスランバー
伊坂 幸太郎 (2007/11/29)
新潮社
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<おまえ、オズワルドにされるぞ。伊坂幸太郎の最高傑作登場!>

わたしの中の伊坂幸太郎ベストは『アヒルと鴨のコインロッカー』だったのですが、この作品はそれを上回ってしまいました。それほど、凄い作品でした。早くも今年のベスト級(笑)。刊行時期が悪く、各ベストにもエントリされていませんが、今年のベスト候補でしょう、これは。

仙台での凱旋パレード中、突如爆発が起こり、新首相が死亡した。同じ頃、元宅配ドライバーの青柳は、旧友に「大きな謀略に巻き込まれているから逃げろ」と促される。折しも現れた警官は、あっさりと拳銃を発砲した。どうやら、首相暗殺犯の濡れ衣を着せられているようだ。この巨大な陰謀から、果たして逃げ切ることはできるのか?【新潮社HPより】


ただただ、凄い作品を読んでしまったというのが第一の感想です。『私の男』のような重いものではなく、とってもライトな感覚だったのです。決して、爽快なものでもないんですが。やはり、伊坂さんらしいラストがいいですね。

物語は引用のとおり。一人の男が濡れ衣を着せられ、逃げるお話。これが怖いんです。犯人に仕立て上げられる描写が怖いんですね。何から何まで陰謀が張り巡らされ、マスコミまで利用して仕立て上げられていく過程がとっても怖いんです。そして、ある事件を基に、張り巡らされたセキュリティポッドという、監視装置。画像は基より、携帯の通信まで傍受特定できるというもの。これって、リアルですよ。今でもいcセキュリティカメラっていたるところにあるじゃないですか。それが国家の意志として利用されたらと思うと、寒くなります。携帯だって、簡単に発信元は特定できますしね。

そんな中を青柳は逃げていきます。頼れるのは自分の知力と体力、友人のみ。特に学生時代の友人四人組のエピソードがそれぞれに泣かせます。これは、『砂漠』を思い出させます。それぞれのエピソードがちゃんと生きているからまたすごい。

『ラッシュライフ』や『フィッシュストーリー』で見せた時間の使い方、『チルドレン』『陽気なギャング…』のような粋な会話。
そして、物語り全体に散りばめられた伏線。途中で何度も、ページ遡ってしまいました。ミステリですので、詳しくは書けないのが残念だなー。

その中でも「最大の武器は習慣と信頼」という友人の言葉が最後まで印象的でした。結局、人間と人間の信頼なんですね。元恋人樋口晴子との関係。父と子の関係。これが泣かせます。信頼されるということ、信じるということ。これが唯一の武器になっていきます。

未読の人のために、なるべく細部の感想は省略しました。
まさしく伊坂幸太郎の最高傑作です。わたしは、これ買ってまた読みます。まだまだ、隠されていたものが発見できるような気がすんです。
最後にこれだけは
「だと思った」に鳥肌が立つくらい感動し、泣きました。
今から読む人はいいなー、また感動が味わえるんですから。
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08図書館に行こう(3)

少し前になりますが、図書館に行ってきました。
今回の借り出し本はこちら↓

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)あの頃ぼくらはアホでした (集英社文庫)サマースクールデイズ (ピュアフル文庫)空飛ぶタイヤHEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

いつものことながら全部は無理でしょう(笑)
期限はどんどん迫るのでした。
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テンプレート変更しました

久しぶりに、テンプレートを変更しました。
わたし、青が好きなので今後もこの色がベースになりそうです。
ついでにブログパーツの時計を変更。「あわせて読みたい」を追加。

また2カラムから3カラムにと変更。
まっ、気分転換ということで。
プロフィール

よし

Author:よし
本好きですが、読むのは遅いです。読書メーターやってます。

ただし、スパムが多いため、コメントは承認制、TBは現在禁止しています。

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