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銀座開化おもかげ草紙 松井今朝子

銀座開化おもかげ草紙 (新潮文庫 ま 32-1) 銀座開化おもかげ草紙 (新潮文庫 ま 32-1)
松井 今朝子 (2007/09/28)
新潮社
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<人が変わると、街が変わる。街がかわるからこそ人が変わる>

10月発売の文庫作品なのに、画像がないのはなぜ?売れすぎて、在庫ないのかなー、ひょっとして。
松井さんは、ご存知「吉原手引草」(未読)で直木賞を受賞されました。その作品群については定評があったのですが、わたしは初読み。
これが、思いのほか良くて、感激しました。しかし、久しぶりの時代小説のレビューなので、上手く書けるかどうか…。

久保田宗八郎は、ある事件から逃げるように、蝦夷に逃げていたが、5年ぶりに江戸から東京に帰ってくる。街は変わりつつあるが、士族であった自分の誇りを捨てられず、居場所を探している。そんな時、兄の依頼で銀座煉瓦街で暮すことに。個性ある人たちに囲まれつつも、あの事件のあの男の影が、つきまとう。

実はこのシリーズ、わたしは1作目だと思っていたのですが、幕末の事件のことが語られる「幕末あどれさん」(未読)がシリーズ第1作であるらしい。そんなことを知らずに、読んでも話に入り込むことができました。
それほど、味があるのです。

設定がいいですね。御一新(明治維新)から7年。街も変わりつつある東京。そんな中で銀座の煉瓦街に暮すことになる宗八郎。宗八郎の視線で街の変わりぶりが語られる。ガス灯が敷かれ、店が立ち、食べ物が変わる。人の心も変わりつつある。
そんな中で変わりきれないのが、元武士、宗八郎。上野の彰義隊討伐戦の時に出会ったある男から、逃げているのです。
しかし、自分の心の中で、武士の誇りがあり、また舞い戻ることになるのですが…。

煉瓦街周辺に住む人物がたちがいいですね。戸田の若様。薩摩っぽの市来巡査。元与力の原。一緒に暮している、比呂。そして、宗八郎を慕う綾。実は解説で知ったんですが、かなり有名な人もいるんですね。
そんな彼らが関わる事件なんですが、最後に、宗八郎はある決心をします。

いいなー、この展開。もちろん、涙を誘われる話ばかり。「雨中の物語り」で涙、涙。この話のラストで
「物語の中で人は永遠に生きる」
と語られます。上手いです、松井さん。しびれました。

どうやら続編「果ての花火」も刊行。これは読まなくては。
そして、松井今朝子という作家をこれからも読まなくてはいけないよなー。
西南戦争まではこのシリーズ、書いてくれると信じています。時代を背景にした物語をきっと書いてくれるにちがいない。
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渾身 川上健一

渾身 渾身
川上 健一 (2007/08)
集英社
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<お母ちゃん!>

どこかの書評でも、書かれていたのですが、今年一番泣ける本は「カシオペアの丘で」しかないと思っていました。しかし、この作品も泣かせる。今年二番目の落涙小説です。

隠岐の島で暮らす坂本一家。友人でもあった先妻・麻里は病死。多美子は先妻と夫との一人娘の琴世とともに、平穏に暮していた。二十年に一度の伝統の奉納相撲で正三大関という最高位を与えられた、英明。島で認められるため、期待を一身に受け土俵にあがる。

「青春と読書」連載時から、川上健一さんが相撲を扱ったスポーツ小説を書いていると分かっていたのですが、まさか、ここまで迫力ある作品を書いていたなんて。

話はあらすじの通り、いたってシンプル。奉納相撲に勝つために土俵に上がった、英明と片やもう一人の正三大関、田中敏夫との、相撲のシーンが、何と半分を占めます。
相撲を見た方なら、存分に楽しめ、見ていない方でも、その迫力シーンに手に汗を握って読まれること必至。それだけ、すごい。

駆け落ち同様に先妻麻里と結婚した英明だったが、小さな島の反応は冷たい。周りからも徐々に認められつつも、大役の古典相撲で柱を持ち帰ることこそ、村のためと信じ、相手と闘うことになります。父が昔大関だったという相手田中敏夫。途轍もなく、強い。
そんな相撲を見守る家族、多美子と琴世。

単なるスポーツ小説ではないんです。実はそれぞれの家族小説だったんですね。多くは語られないんですが、それぞれが家族に対しての思いを持って、土俵の相撲を見ているんですね。その辺を少なめに収めたことが成功だとわたしは思います。逆に相撲に集中させることにより、読者は家族とともに、土俵を見させている感じでしたね。さすが、川上さん、上手い。

泣くまい、泣くまいと思って、読んだんですが、無理でした。分かっていても泣ける小説です。
川上さん相撲ファンなのでしょうか?大相撲ではなく、隠岐に伝わる伝統の相撲に着目した川上さんは、すごい。
今年一番のスポーツ、家族小説でした。いやー、面白かった。
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6時間後に君は死ぬ 高野和明

6時間後に君は死ぬ 6時間後に君は死ぬ
高野 和明 (2007/05/11)
講談社
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<運命は変えられるのか!タイムリミットサスペンスの秀作>

この作者は初読みだったのですが、予想外に面白かったのです。
映画畑出身、さらには脚本も手掛けた作者ですので、小説も映画的手法を存分に発揮。ジェット・コースターのような展開でした。

山葉圭史は幼い頃から、人の未来がビジョンとして、現われるという特殊能力を持っている。その圭史に未来を予言された人たちを描く連作短編集。

やはり、表題にもなっている「6時間後に君は死ぬ」が良かったですねー。美緒は、突然、若い男から「6時間後に君は死ぬ」と告げられる。
半信半疑ながらも、思い当たる節がある美緒は、圭史とともに、6時間後に起こる事件に、立ち向かう決心をするのです。
圭史の能力を疑いながらも、次第に信じるようになる美緒。しかし、誰が本当で、誰が自分を追い詰めようとしているのかわからないまま、ラストに向うのですが、その緊張感がたまらないですねー。
これぞ、タイムリミットサスペンスのお手本。

最終話の「3時間後に僕は死ぬ」はその姉妹編。その後の物語でもあるんですが、あまり触れることができないのが、つらい。だって、「6時間…」にも繋がっていますし。

その他の話も、どれも圭史の予知能力が背景にある話。
「時の魔法使い」は、幼い頃の自分に出会う話。ほんわかと温かな気持ちになって、元気になります。
「恋をしてはいけない日」は今日は恋をしてはいけないと告げられた女性が、ある事件が基で、恋をしてしまう話。怖い話でしたね。

私が好きなのは「ドールハウスのダンサー」
ダンサーの夢をあきらめず、ひた向きに頑張る女性。そして、まもなく閉じられようとしている、山里のドールハウス。二つの話が、最後に交差します。これがいいんですね。最後はとっても、清々しくて。
一生懸命に頑張れば、きっと運命は裏切らない。

うだつのあがらない生活や、夢がかなえられない毎日を生きている人、消せない過去を悔やんでいる人たちが、どう自分の運命を変えていくのかが書かれています。

運命は自分で変えていくしかないんですね。希望は希望として捨てずに。最後まであきらめなかったら、運命は裏切らないと言っているようで。まるで美緒と圭史のように。

好き嫌いはあるのでしょうが、わたしは、ミステリーとしても秀作だと思って読み終えました。
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大きな熊が来る前に、おやすみ。 島本理生

大きな熊が来る前に、おやすみ。 大きな熊が来る前に、おやすみ。
島本 理生 (2007/03)
新潮社
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<私と彼の中にある、確かなもので、悲しみを越えて行こう>

久方ぶりのレヴューです。どうもこのところ、大スランプで、読書も感想もできないまま。
この作品は読了して3週間も経っているので、内容を忘れつつありますが、思い出しながら書きますね。

さて、久しぶりの島本さんでした。前作「ナラタージュ」が非常に良くて、女性の心理描写が実に巧みな作家さんだと思いました。
そして、この作品、島本理生という作家の成長を感じる1冊と感じつつも、怖い恋愛小説だったなーと思います。

「大きな熊が来る前に、おやすみ。」…徹平と暮らし始めて、もうすぐ半年。手放しで幸せという気分にはなれなかった。
「クロコダイルの午睡」…試験の打ち上げ会に、苦手な部類、都築新がやってきた。それからずうずうしくも、霧島の家に、ご飯を食べに来るようになる。
「猫と君のとなり」…学生時代のバスケ部の顧問だった先生のお通夜の後、酔っ払って動けなくなった、後輩、荻原を自分の部屋へ連れてくることに。

この三話の中編が収められていますが、共通するのは、恋愛の危うさと幸福とはどういうことかということです。
「大きな熊…」では父から受けた、過去の思い出をベースに、徹平の中に父を見ているんですね。そして、どうぢても忘れることのできない徹平との大ゲンカがずっと、尾を引いているんです。
言わば、忘れられない暴力の傷跡なんですね。それがどうしても結婚に踏み込めないんです。

そして「クロコダイル…」のずうずうしい、都築新。こいつ、いいところのお坊ちゃま的性格で、ずけずけモノを言うんですね。そんな都筑に、徐々に魅かれていくんですけど、こいつの暴言についに、堪忍袋が切れてしまうんです。
それが、とっても怖いんです。

一番ほっとさせられる「猫…」。ずっと先輩のことが好きだったと告白する荻原君。猫を通して、昔の彼との思い出をはさみつつ、徐々に荻原君との恋愛に踏み込んでいきます。
三話の中で、一番安心感があり、ほんわかとさせられます。

三話のタイトルの付け方が絶妙です。お気づきでしょうけど、動物がベースなんですね。そして、その動物の特徴が見事に話の中に絡まっているんですねー。タイトルにもちゃんと意味があったり。
この辺が上手いんです。

踏み込めない、踏み出したい、そして踏み始めたい恋愛模様を見事に島本さんは、作品の中に出しているんではないでしょうか。
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君たちに明日はない 垣根涼介

君たちに明日はない (新潮文庫 (か-47-1)) 君たちに明日はない (新潮文庫 (か-47-1))
垣根 涼介 (2007/09/28)
新潮社
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<リストラ請負人、厳しい現実が他人事ではない>

新作「借金取りの王子」はこのリストラ請負人シリーズ第2作。1作目が文庫化されました。
その復習のために、1作目のレビューを載せますね。

リストラを行うことが自分の仕事、「リストラ請負人村上真介」。そんな彼が請け負って出会うのは怒る女、オモチャ屋の男、旧友、元コンパニオン、音楽プロデューサー。シビアな現代を描きつつ、決して暗くない5つの短編。

うーん、リストラ世代になった今、この短編集は自分にとっても、決して笑って読むことができませんでした。こういう人物の設定や、リストラの対象にされる人たちを見るまなざしも、優しい視点で書いて欲しいのですが…。主人公はリストラ請負人だけあって、淡々と自分の仕事をこなしていきます。一人ひとりを査定で評価してリストラに追い込めれば良いのですが、簡単にそうはいかないのがまた現実的。何ともいえない複雑な気持ちに。

ただ、この作者はこうしたテーマを決して暗いものではなく、展望を持った書き方をしているところがすごいなーと感心してしまいます。読ませる力量はさすがです。名作「ワイルド・ソウル」のノリはこの作品にも出ていています。ある意味この作者の特徴なのかなと思ってしまいます。

人物の設定も面白い。主人公の恋人芹沢陽子との出会いとその後。
彼といつもコンビを組んでいる川田陽子は美人なのだけれども、今風のボケの持ち主。そんな彼女とは一定の距離を置いて付き合っています。そしてリストラの対象になる人たちの悲哀。

この主人公、マザコンなのか、かなりの年上の女性を好みます。その辺をもう少し書いて欲しかったのと同時に、現実的な生活の臭いが感じられない主人公なのです。全て完璧。

しかし、このテーマでここまで読ませるのは作者の力量。今後も読む作家だと思いますね。ACT.3「旧友」の夫婦の会話には泣きました。この作品の中でも絶品です。

良くもあり、悪くもあり。しかし、力量は認め、期待する。そんな作家さんは、誰にもありますよね。わたしにとってはきっとそういう作家さんでしょう。
結論は全体的にはいいが、個人の思い(読む側の)に左右される本でしょう。このテーマに挑戦した作家の意欲作と取りたい。
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制服捜査 佐々木譲

制服捜査 制服捜査
佐々木 譲 (2006/03/23)
新潮社
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<犯罪が起きない町に潜む闇>

北海道警の不祥事の煽りで、同じところに長く勤務させないという方針の下、札幌から着任した川久保巡査。小さな町を守る、たった一人の駐在警官。私服から制服に変えて、「何も起きない町」の事件の捜査にあたる。

新しい警察小説という触れ込みは、はずれていないです。従来の警察小説は警察機構の中で、はみ出したり、組織の中で苦しむ主人公が主でした。しかし、この小説ではたった一人の警官。それも事件が起きないのが当たり前のところという、全く違う設定になっています。そんな田舎の町で起きる、事件を前刑事という肩書きがある彼は解いていきます。

管轄する署の刑事たちは、
「制服は捜査するのを邪魔するな」と考えていますが、川久保は
「捜査ではなく、町民の情報を集めるのがわたしの仕事」と言います。捜査もままならない中、事件をどう解決していくんでしょうか。

この小説のベースは、北海道警で起きた裏金事件。この不祥事を巧みに背景に取り入れ、主人公を造形しています。これはネット仲間からの情報ですが、冒頭の「捏造」の事件は、実際の事件がベースのようです。現在も公判中だとのこと。
北海道出身の作家、佐々木さんならではでしょうね。

単独捜査を余儀なくされる主人公を、いつしか励ましています。しかし、各話の解決がどうも、すっきりしないのです。これも最終話「仮装祭」があってこその持っていき方なのでしょうけど、もう少しすっきりと…はわたしの欲なんでしょう。「仮装祭」が良すぎるんですね。「犯罪者を出さない町」に気付くんですね。

しかしながら、この主人公を作った佐々木さんはすごい。作家の逢坂さんも書評で書いていたのですがこれは西部劇なんですね。新任保安官が名もない町に辿りつき、一人で奮闘する。そういう西部劇の世界が、この作品をはじめ、他の作品にも色濃く反映されています。

北海道という地を背景に、紡ぎだす和製西部劇の世界。次はどんな作品を作ってくれるのでしょうか。何とも幅広い作家さんですねー。
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サクリファイス 近藤史恵

サクリファイス サクリファイス
近藤 史恵 (2007/08)
新潮社
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<勝利は自分ひとりのためだけではない>

今年度ミステリーの話題作。各書評も評価が高いです。
実に幸運に早くも読むことができました。噂どおりの作品に仕上がっています。

白石誓(チカ)は自転車ロードレースチームの若手アシスト。アシストとは、チームのエースを勝たせるため、ある時は先頭を走り、ある時は後続を抑える。そのロードレース中に惨劇が起こる。

この作品は、徹底的に自転車のロードレースシーンが書かれています。
大半はレースなんですね。それが、この作品の疾走感というか、スピード感を増しているんですね。そして、緊張感も迫ってくるんですね。
主人公チカやエースである石尾の生活や環境などは徹底的に省略しています。さすがにチカの過去、恋人だった香乃とのエピソードには触れられていますけど。
そうした、ほとんどロードレースのみの描写にこだわったことが、成功なんですね。

そして、日本では知られていないませんが、ロードレースを取り上げたこと。こんな駆け引きがあることすら、知りませんでした。チームでエースを勝たせるために、チカのようなアシスト役がいることも。
わたしは、モーターレースが好きなんでそういう駆け引きがあることは知っていたんですが、自転車の世界にもあるんですねー。
この題材を取り上げた、作者もすごいと思います。

ずっと石尾の過去の出来事が現在にも、尾を引いています。そして、レース中に起こる惨劇は、一体、なんなのか。
チカは真相を探っていきます。

ミステリーだから、あまり書けませんが、その真相を知った時に、自分が勝利することじゃなく、アシストに徹することが、こんなに大切で信頼されることを改めて知るんですね。そして、チームでの信頼も得ることも。
ページを終えるとき、チカの成長が伺えます。悲惨な結末だけではないところがまたすごい。

この作品は、スポーツ青春成長ミステリーの傑作です。
また好きな作家さんができてしまいました。
プロフィール

よし

Author:よし
本好きですが、読むのは遅いです。読書メーターやってます。

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