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手紙 東野圭吾

手紙 (文春文庫) 手紙 (文春文庫)
東野 圭吾 (2006/10)
文藝春秋
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<Imagine all the peaple Living for today>

ここを始める前のブログからの再UPです。
この作品も重いです。
しかし、ラストで光が…。

弟、直貴を大学に行かせるお金が欲しい。兄、剛志は強盗殺人を犯してしまう。たった一人の肉親、直貴の苦難の人生が始まる。そんな弟を気遣う兄は刑務所から毎月1回手紙を出すが…。

東野作品でこの重さは初めてでした。なんとも辛くて、考えさせられました。
加害者の家族とは…。同じ加害者という十字架を背負って、苦難の道を歩く、直貴。通っている高校での関わりたくない故の、親切。大学に行きたくても経済的に無理なのであきらめざるを得ない現実。
そして、やっと自分の夢を歌手に見出して挑戦する直貴に、仲間からやめて欲しいといわれる。

次から次へと、苦難の道が書かれていきます。その後も、就職活動や好きになった女性への結婚の破綻。加害者ゆえの苦しみが押し寄せます。実に重いのです。
殺人者の弟という事実から、隠れて逃げてしまう直貴。自分がこんな境遇だったらどうするのか。やはり逃げてしまうんだろうなー。しかし、直貴のように強くはなれない。
逃げて逃げて、追い詰められて、生きる事さえ精一杯だろう。いや生きてもいけないかもしれない。だから、兄からの手紙は読まずに捨ててしまうというのも分かる気がします。

今、新聞やニュースでは暗いことが一面になります。バラバラ殺人であったり、飲酒運転であったり、政財界の癒着であったり、被害者と加害者がいつもそこにあります。
ですが、被害者に目をむけてしまうのは当然なことなのですが、加害者の家族に目を向ける事はないとお思います。そんなタブーに、あえて東野さんは挑戦しています。

やっと就職して入った会社の社長は「ここから始めろ」と異動を受け入れろといいます。
正々堂々と事実を受け止め、こつこつとできる事を頑張ると決意した直貴。しかし…。
家族への社会的な制裁(差別)は、やむことがありません。正々堂々と生きる意味を履き違えていると気付くんです。それは自分の立場が被害者になったとき、ある決意が生まれます。兄への手紙も書くことになります。

救いは直貴の側で支えた由実子です。彼女の存在の大きさに気付いていきます。同じ逃げるという体験をしていたんでね。彼女がいたからこそ生きていけたんです。
ラストは泣きました。辛い十字架を背負った兄弟でも、たった一人の肉親の絆は消えないんです。

本当に重い内容です。ちょっと勇気が必要です。でもわたしにとっては、現代の社会がかかえる問題を浮き彫りにしていると思います。この作品を読んで、ニュースを見る目が変わりましたもの。そんな作品なんです。
「想像してごらん…」イマジンのメロディに乗せて哀しみが漂います。しかし、バンド仲間の寺尾が言った「ちゃんと想像してみろよ。差別や偏見のない世界を」という言葉がずっと胸に残ります。

しかし、一つ…。それは直貴がバンドに目覚めていく下り。希望を歌には少し現実離れではないですかね。しかし、これがなかったら、ラストには結びつかないし。分かっているんだけどムムムでした。
しかしいい作品であることは間違いありません。
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八日目の蝉 角田光代

八日目の蝉 八日目の蝉
角田 光代 (2007/03)
中央公論新社
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<私はこの子を知っている。この子も私を知っている>

この前に読んだ「悪人」があまりに強烈だったため、この作品の印象が薄れてしまいました。おまけに、この作品は図書館返却に迫られ、途中止めになったため、感動も薄れてしまったかなー。
しかし、これは今までの角田作品から一転。新境地とも思える作品です。

不倫相手の子どもを、さらって逃げてしまう希和子。行くあてもなく、行き着くところは、名古屋、奈良の怪しげな宗教団体、そして小豆島へ。17年後、さらわれた子どもはかっての逃亡先を訪ねることに。

逃げる希和子人の気持ちが、痛々しくなります。
犯罪をしてしまう気持ちというのでしょうか。切ないんですねー。この気持ち。
この作品は、いつもの角田さんとは少し違った、作風です。ミステリー色が強いかな。子どもさらい、逃げていくというのロードノベルなんですが、立ち退きを迫られている謎のおばさんであったり、怪しげな宗教団体であったり。とても落ち着けるものではありません。

宗教団体での告白大会が泣きますね。「自分の欲しいものは?」希和子は未来と答えるんですね。希和子だけでなく、そこに集まる女性の過去とリンクし、切ないんです。

そして、二章。薫は成長し、実の両親と妹と暮したのだが、事件を引きずりつつ、ギクシャクした関係になっている。
そして、不思議なことに希和子や両親の後を追うように、不倫をしているという設定です。

自分は一体なんなのか。それを見つけるため、希和子という女性を知るために、昔を辿るのですねー。ここが大きなこの作品のキモです。
ここからが、またいいんです。
宗教団体の施設を見ても、思いが湧かないんですが、瀬戸内海と小豆島の風景を見た瞬間、思い出が…。
ここがいいんですね。

八日目の蝉は幸せなのか?幸せなんですよ。だって、それだけ命を与えられているのだから。わたしは、そう思ったのですが。
そうですよね。

角田さんの新境地のこの作品、ミステリー要素も濃いものですね。でも角田さんらしいなー。
本当に小豆島が、とってもいいんです。

愛人とともに、暮した子どもがその過去に縛られながら、現在を生きるために、辿った旅。素晴らしい作品に仕上がっています。
これは、名作でしょう。
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悪人 吉田修一

悪人 悪人
吉田 修一 (2007/04)
朝日新聞社出版局
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<悪人は誰なのか?>

いやはや、すごい作品に出会いました。
2007年は、この作品と出会うためにあったといっても過言ではありません。それほど、すごい。
あまりに、いい作品でネタバレが多数あります。
未読の方は、読了後にお越しいただいたほうがいいかもしれませんのでご注意を。

福岡と佐賀の県境の三瀬峠で女性の遺体が発見される。女性は出会い系サイトで男と会う予定だった。犯人は絞られ、出会い系で知り合った女性を巻き込んで逃亡することに。

一つの殺人事件を通して、描かれる被害者、加害者、その家族と友人の置かれる境遇の厳しさ。しかし、この作品は、それだけではないのです。
この作品は重いのですが、読者にその重さを受け止める逞しさを伝えます。つまり、乗り越えることはできないが、前に進む逞しさというのでしょうか…。

例えば、祖母房江がスカーフを買い、詐欺師グループの事務所に乗り込む場面。被害者の父佳男が福岡から帰ってくると、妻里子が理容店を再会している場面。
それぞれがこの事件を受け止めながら、前に進んでいくんですね。
そこが感動を呼ぶんですね。

いろいろ、いい場面はあるのですが、一番好きなのは、祖母房江がマスコミに追われ、バスに乗るところです。運転手のひと言に涙、涙です。
呼子のレストランで光代と二人で食べる、イカ定食。祐一が罪を告白するんですね。その何と悲しいことか。
このシーンだけでも、泣けてしまう。

殺人を犯すことはもちろん、悪い。しかし、その背景は一体誰が作ったのか。人と人とのつながりは、なぜ、こんなに希薄になったのでしょう。一人では生きられないから、つながりを持ちたい。だけど、できない。それで、出会い系サイトに走ってしまう。
こんな社会の希薄さを、存分に伝えています。
悲しいことに、大切な人がいない人たちが多すぎるんですね。

大切な人を見つけた祐一と光代の関係も泣かせます。幸せになりたい、ただそれだけだったのです。祐一が取った行動は大切な人だからこそだったのですね。泣かせます。

この作品は、現代が抱える、社会の姿を一つの殺人事件を通して、浮かび上がらせ、悪人とは一体誰なのかを、読者に突きつけます。
紛れもなく、今年の収穫です。
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氷菓 米澤穂信 

氷菓 (角川スニーカー文庫) 氷菓 (角川スニーカー文庫)
米澤 穂信 (2001/10)
角川書店
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<古典部を守りなさい>

何事にも、集中しないホータローだが、高校に入学すると、姉から古典部に入りなさいと言われる。廃部寸前の古典部とは何?どうやら伝統がある部のようだが。やがて、古典部に集まる部員とともに、様々な謎を解くために重い腰を上げることに。

米澤さんの「古典部シリーズ」を読むことに。
この作品は、米澤さんのデビュー作。
いわゆる「日常の謎」のミステリーです。何といっても登場人物が立っていますね。

前向きさを嫌い、動くことが大嫌い。灰色省エネ少年、折木奉太郎。豪農の名家、千反田える。手芸部に入りながらも、古典部に籍を置くことになる減らず口の福部里志。図書委員の毒舌家伊原摩耶花。
この四人が、古典部での活動をしていくのですが、
「古典部って、何?」
ということころから、このミステリーは始まります。古典部そのものが大きな謎なんですね。

古典部ってどうやら三十数年の歴史があり、文化祭で文集を発行していたらしい。その文集のタイトルが「氷菓」。
この奇妙なタイトルがまた謎。
失踪した千反田の叔父も古典部に籍を置き、幼い千反田に残した言葉を思い出すため、ホウタローに依頼します。これも謎なんですね。

古典部にいやいや入りばがらも、様々な謎を解いていくうち、重い腰を上げてしまうホータローが可笑しいですね。
ミステリーの作りとして、上手さを感じました。さすが、米澤さん。

一番笑うのが、旅先から様々な、アドバイスをする姉、供恵の存在です。このお姉さん、肝心要の部分を書かないから、余計ややこしくなるんですね。ついに電話をすることにもなるし。

さて、タイトル「氷菓」の謎を解き、栄光ある古典部の活動が始まります。
しかし、しかし、古典部って何?
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真鶴 川上弘美

真鶴 真鶴
川上 弘美 (2006/10)
文藝春秋
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<まなづる。ささやいてみる。まなづる。また痛みがくる>

この作品は、「かみさまの贈り物」のゆうさんのレビューをきっかけに読んでみることになりました。

川上さんの作品は、どうも合わないような気がして、今まで何度も挫折の繰り返し。しかし、この「真鶴」は良かった。川上さんらしく、不思議な作品ですけど、すっと読書の世界に入ることができました。

十二年前に突如、失踪した夫、礼。その日記には真鶴の文字が。真鶴に何があったのか。京は夫の姿を求めて、真鶴へ何度も足を運ぶことになる。

文体がすごく、流麗です。それは、川上さんが描くこの作品の一文、一文が短いせいでもあるのだろう。とにかく短い。だから、失踪された夫を今でも思う気持ちや、胸が痛くなるような切ない痛みが、伝わってきます。
切なさだけの物語ではありません。主人公京は失踪した夫を思いつつ、ちゃんと青慈という恋人もいます。もっとも妻も子もいる相手なんですが。会いたい時に会い、したいときにからだを求めるという関係なんですね。もちろん、根底には愛する夫の影があります。

その夫の影が作り出したものか、真鶴の亡霊なのか、京についてくる女がいます。現われたり消えたりする存在なのですが。京に付きまとう彼女も礼の何かを知っている存在なものだから、つかず、離れずの関係です。

一人娘も成長し、礼との思い出が回想されます。その回想が、とっても切ないんですね。そして、とってもふわふわした描写です。これは川上さん特有のものですね。
不倫といえば、どろどろという感じなんですけど、さっぱり描かれている。とっても性愛の描写も露骨なんですけど、嫌悪感を感じることなく、入り込みました。むしろ自然な形とも取れてしまうから不思議。
一人娘の成長と母と、そして、真鶴(あの世とこの世を繋ぐ箱のような存在)に通うごとに、礼との踏ん切りをつけていきます。
ラストあたりでは、とっても主人公自信の思いもすっきりと描かれています。

ついてくる女がどうもわずらわしく感じてしまいました。どういう関係なのか気になってしまって。てっきり礼と何がしら関係があるのかと思っていました。分からない存在でしたねー。

しかし、川上さんって、文章が上手いですね。特に料理の描写。匂いが伝わってくるような気がします。特に煮干のところは、「うまい」と手を打ったほど(笑)
川上さんの読まず嫌いも、治まりそうです。

川上さんは書評集も出されましたね。川上作品とともに、こちらも読んでみようと思います。
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ぐるぐる猿と歌う鳥 加納朋子

ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド) ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)
加納 朋子 (2007/07/26)
講談社
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<「ちゃちゃちゃちゃ」で謎を解く>

この作品は
ナナメモ
しんちゃんの買い物帳
粋な提案
まったり読書日記
の各ブログから、読んでみようと思いました。また内容なども参考にさせていただきました。ありがとうございます。

五年生の春、父親の仕事の都合で、北九州の社宅へ引越した高見森(シン)。東京では乱暴者のレッテルを貼られ嫌われ者だったが、不思議な仲間達と出会い、受け入れてくれ、友達となる。そして、幼い頃の記憶の片隅の事件も解けていく。

このお話のいいところから。
登場する少年少女の何とも個性的なことか。美少女あや、竹本五兄弟。その一人が同級生のギザ十。なぜギザ十か、ギザギザ十円玉を集めているかららしい。ココちゃん。そして、不思議で何でも分かる少年パック。この少年の境遇が何とも悲しいのですが。
そんな少年少女がこの物語で活き活きと、走り回っています。

そして、北九州弁が実に可愛い。語尾に「ちゃ」ってつくのが、特徴らしいのですが、可愛いんですよ。他にもいろいろ面白いのがあるのですけど、やはりこの「ちゃ」ですねー。どうやら、加納さん北九州に住んでたことがあるらしい。

挿絵も分かりやすくて、きれいでした。本当に子どもも大人も楽しめる本ですねー。

さて、この物語はシンの友情物語ばかりではないのです。大きなストーリーは幼い頃、パンダ公園の側の社宅で出会った女の子と、その事件。
その謎が柱かなー。思いがけず、謎が解けていくんですね。さすが加納さん。
しかし、疑問も。あやちゃん宅の玄関には、なぜパンダ公園の写真があったのか?パックはなぜ、ココちゃんちの「タンスの上を見ろ」といったのか?(まあ、パックはココちゃんから聞いたのでしょうが)
どなたか、教えてー。

パックの境遇と必死で守ろうとする子ども達に涙。そして、ラスト。自転車で坂をみんなで駆け下りるシーンにジーンとしてしまいました。
「ミステリーランド」は、初読みだったのですが侮れませんね。かって子どもだった大人と少年少女のために」という、うたい文句そのまま、とっても良かったです。

加納さんのあとがき通り、この仲間達で、続編「ちゃちゃちゃ探偵団」、ぜひとも期待しています。
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結婚写真 中江有里

結婚写真 結婚写真
中江 有里 (2006/11)
日本放送出版協会
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<誰かが幸せを運んでくるんじゃなく、幸せは自分の中にある>

この作品は「ナナメモ」のななさんのレビューで知り、読んでみました。
作者中江さんは、ご存知のとおり、女優、司会業に大忙し。おまけに庁読書家。そんな中江さんの小説デビュー作です。

「結婚写真」…満は中学2年の時、友だちからカラオケボックスでの出来事から周囲にシカトされる。そんな窮地を救ってくれたのが母の恋人林さんだった。母、和歌子は夫と別れて以来、仕事に恋に子育てに頑張ってきた。そして、満と一緒に記念の結婚写真を撮ることにした。
「納豆うどん」…父の家業は弁当屋。そこにアルバイトにやってきたのは、中学の頃、辞めていった元副担任の教師、桂田だった。一緒に「頭のよくなる弁当」を考えることに。

テーマは「幸せのかたち」。「結婚写真」の家族は、夫と別れ、新しい家族、恋を生きようとする親子。「納豆うどん」は、ある日突然、口が利けなくなった母と自由奔放に生きてきた父。そんな中で、元教師と出会い、家族の幸せ、生きるという幸せを感じ取ることになるんですね。

どちらも、とってもいいお話です。記念に撮った「結婚写真」をずっと、ある場所に保管していた満。痛いほどの中学の思い出と秘密。でも、母、和歌子共々、一生懸命に生き、成長していくんですね。
一方、「納豆うどん」。しゃべらない母にうどんの作り方を教わるんですが、ここが結構泣ける。そして、最後も爽快かも。

不満は、「結婚写真」でなぜ、林さんの心が母から離れてしまったのかというような、細かい描写が不足しています。やはり、デビュー作だからというのもありますよね。しかし、中学、高校時代の多感な女の子の心情を見事に表現していると思います。
わたし的には水準以上。

さすが、才女。次の作品は書かれないのでしょうか。ぜひ、書いていただきたいなー。

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

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卵の緒/瀬尾まいこ

卵の緒 (新潮文庫)卵の緒 (新潮文庫)
(2007/06)
瀬尾 まいこ

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僕は捨て子だ。その証拠に母さんは僕にへその緒を見せてくれない。代わりに卵の殻を見せて、僕を卵で産んだなんて言う。それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作。家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟。初めて会う二人はぎくしゃくしていたが、やがて心を触れ合わせていく(「7's blood」)。優しい気持ちになれる感動の作品集。【新潮社HPより】

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puzzle 恩田 陸

puzzle (祥伝社文庫) puzzle (祥伝社文庫)
恩田 陸 (2000/10)
祥伝社
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<孤島で起きるありえない殺人>

長崎県西彼杵郡沖に浮かぶ鼎島。かつては炭鉱で栄えた島も今は、廃墟になっている。その誰もいない島で起こる、餓死、墜落死、感電死による殺人事件。

この作品は、「粋な提案の藍色さん」のレビューを参考にして、読んでみました。
久々の恩田作品。この作品自体が、「無人島」というテーマで書き下ろされたようなのです。
登場人物は二人。事件を調査する検事、関根春と黒田志土。この二人が事件現場を歩き、調査を進めますが、ある時点から意外な方向に展開していきます。そのカタルシスがいいんですねー。

冒頭から提示される、何の関連性もない、バラバラの記事。
「幽霊船」「2001年宇宙の旅」「元号制定」「料理のレシピ」「地図の作り方」
これらは何を示唆しているのか、まったく分からないのです。そこがまたいいんですね。タイトル通りのパズルなんですよ。
そのピースがはまっていくんですが…。
それはないでしょー、展開はいいのですが、無理がありすぎなんです。

さらに、動機は謎のまま。もう少しページ数を割いて欲しかったなー。
そして、真実はというと…。これまたありえないでしょー。
実に恩田作品らしいのですが、納得できませんでした。
作品自体は、文庫版で150頁足らずなので、あっという間。しかし、もう少し掘り下げて欲しかったなー。

恩田さんですから、ただの殺人事件ではないということは、分かりますよね。
半分面白くて、半分は不完全燃焼。何ともいえない読後感になりました。
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檸檬のころ 豊島ミホ

檸檬のころ (幻冬舎文庫 と 8-2) 檸檬のころ (幻冬舎文庫 と 8-2)
豊島 ミホ (2007/02)
幻冬舎
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<地味な高校生活に当たる、一条のスポットライト>

決してスポットの当たることのない、地方の女子高校の生活。普通の生活の中に宿る、高校生の悩みや不安を切り取る連作短編集。

この作品は、「まったり読書日記」のエビノートさんに薦めていただきました。「神田川デイズ」の高校生版ですね。
しかし、豊島さんのお話は、痛い話が多いですね。
痛すぎて涙が出るんじゃなくて、なぜか胸がチクチク痛むという感じ。
どの作品も、とってもいいですねー。

といいつつ、最後の話「雪の降る町、春に散る花」は泣きました。
東京の大学に入学も決まり、付き合っていた彼と離れ離れになることの主人公の辛さ。そして、別れの時を切なき描きます。
自分も田舎を離れ、一人暮らしを始めたときの不安と寂しさがオーバーラップしてくるんですね。ただし、恋人はいませんでしたが。
大切な人だった人と離れ離れになる、寂しさが切々と伝わってきます。

唯一、この作品の中で系統が違っていたのが「金子商店の夏」。
司法試験に何回も落ちている和弥は祖父が、危ないという知らせに慌てて帰郷します。実家の学校の側の、小さな小さな金子商店。そこで懐かしい友だちと合って、幼い頃の記憶が蘇ってきます。
そして、まんざら「金子商店」も捨てたものでないと思い始めます。ラストで和弥が、ホースで水を撒くシーンがとってもいいんですね。
そこには、希望が溢れています。

その他は女子校生の話。
どれも粒揃いです。しかも微妙にリンクしています。
神田川デイズの手法ですね。

何気ない生活の中に、光を当てる豊島さんの手腕に、今さらながらすごさを感じますねー。
何回も言いますが、本当に痛い作品を書かれる作家さんです。
この痛さが、癖になるから不思議。

豊島ミホさんは、どこにいくのでしょうか。
今後の作品も期待します。
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切れない糸 坂木 司

切れない糸 切れない糸
坂木 司 (2005/05/30)
東京創元社
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<クリーニング後のビニールは外さないとダメ>

父親の急死に伴い、家業のクリーニング店を継ぐことになった和也。最初の仕事は、御用聞き。クリーニング店と和也の周りで起きる謎を、爽やかに描く連作短編集。

本邦、初読みの作家さんです。本当は「ひきこもり」シリーズからと思ったのですが、こちらの作品が先に手に入りましたので。
この作品もぜひ、シリーズ化して欲しい作品ですね。それだけ、わたしにはあっていました。

やむなく、場当たりに家業を継ぐことになった和也。クリーニングのことは何も分からないのですが、周りの人たちが支えていきます。四つの事件が進むとともに。
母。パートの松竹梅トリオ。そして、アイロン職人シゲさん。みな温かくて、和也の成長を見守っていきます。
特にシゲさんがいいですね。なぜ、自分の店に住み込み同然で働いているのか。そして、なぜか映画にも造詣が深い。
一体、何者?

今や、こういう形のミステリーは珍しくなくなったのですが、敢えて説明すると、各話ごとにちゃんと謎が用意されていて、全体を通しての謎もあるという作品。そういう意味では、タイトルも謎かなー。

さて探偵役は喫茶店で働く沢田。学生時代の友人といえば友人なんだですが、喫茶店でバイトをしている身。その沢田が実に細やかに、和也を助けていきます。いつしか友情になっているところがまたいいのです。

と、いう内容ですが、わたしは特に第三話「秋祭りの夜」が好きですね。
商店街で秋祭りをするため、出し物を企画しなくてはいけない。その企画に和也が一働きするという話なのですが、秋祭りで商店街の人たちが、和也に労いの酒を振舞うのですが…。温かいんですねー、商店街の人たちが。プロが集まる商店街が寂れていくことや、消えていくことへの作者の思いも感じられますねー。

こうして、和也も周りの人たちに教えられ、成長していきます。
そしてクリーニングや服の知識も、どんどん吸収していきます。読者も一緒に学んでいくんですね。そこがいいんです。
そして、出会う人たちとの関係も、ますます広がっていきます。

とっても温かみを感じる作家さん。初読みは買いです。新作「ワーキング・ホリデー」も読まなくてはと、思ったのでした。

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よし

Author:よし
本好きですが、読むのは遅いです。読書メーターやってます。

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