コンテントヘッダー

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
コンテントヘッダー

あの日にドライブ 荻原 浩 

あの日にドライブ あの日にドライブ
荻原 浩 (2005/10/20)
光文社
この商品の詳細を見る

<もう一度、人生をやり直すことができたら…>

荻原さんは、本当にいろんなパターンの作品が書ける人だなーと感心してしまいます。シリアスにコミカルに、本当に沁みるんですよね、心に。この作品も例外ではありません。

長年勤めた銀行を上司との反発で辞めた、牧村伸郎。タクシーのドライバーに転職するもなかなか、売り上げが伸びない。そんな中で昔住んでいた町、アパートを見たとき、心の中に、人生やり直しができないかを模索していく。

学生時代付き合っていた恵美の住んでいるところを、こっそり訪ね、やり直しを考えていきます。このやり直しの妄想(イメージ)のシーンが笑うんですけど、あまりに多すぎて多少食傷気味に。中だるみになってしまったのは残念。

これだけの話なんですが、読ませるんですよ。誰もが抱えていると思う「やり直しができたら…」という気持ち。荻原さんはちゃんと、答えを用意してくれていました。大体予想はつくでしょ?
プロとしてのタクシードライバーの技(?)を学んで、売り上げを伸ばしていくんです。これ、ちょっと参考になります。

そして、これまでの人生、捨てたもんじゃないと思えてきて、元気が出てくるんです。この主人公の前職が今のわたしと同じ職業。さらに同年代となっているところもすんなり入って、随所にうなずいて読んでしまいました。
難点は、やはりイメージシーンの多すぎ。
これを、少なかったらどっぷり浸れたと思います。
しかし、わたしは好きです。
あなたは「もう一度、人生をやり直すことができたら…」、どうしますか。
わたしはきっと…。
ぜひ、読んでみて下さい。今の自分を見つめるきっかけの本になれば幸いです。
スポンサーサイト

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

コンテントヘッダー

夜の朝顔 豊島ミホ

夜の朝顔 夜の朝顔
豊島 ミホ (2006/04)
集英社
この商品の詳細を見る


<まるで、小学生時代のアルバムをめくるように>

海辺に近い田舎で暮らす小学生センリ。家族、姉妹や親戚、クラスメイト、隣町の友だち、初恋。小学校時代の6年間のセンリの七話。ちょっぴり、痛い、成長の物語。

また一人、お気に入りの作家ができてしまいました。
少しばかり、読むのが遅れてしまいましたが豊島さんの作品、初読みです。
この作品が初読みで、すっかり豊島さんにはまってしまいました。噂どおり、途轍もない才能を秘めた作家さんだと思います。
この作品のどれもが粒揃い。
少し、紹介すると。

「入道雲が消えないように」
妹チエミは病弱なため、一人では遊びに行けないセンリ。夏休みの楽しみは親戚の洸兄が来て遊んでくれることだった。妹はマリちゃんが見てくれる。しかし、それも終わってしまう。

「ビニールの下の女の子」
山の向こうの隣町の女の子がいなくなった。センリは竹やぶの中にビニール袋を見つける。もしや、センリの心に恐怖が蔓延るのだが。

「五月の虫歯」
隣町の歯医者に通うことになった、センリ。そこで出会った少女と友だちになる。しかし、その少女には秘密がありそう。

「夜の朝顔」
杳一郎のこと「好きっぽい」。そんな彼の気を引くために、髪を梳き、バスケの授業に挑むのだが。

いいですねー。この作品の中に誰もが経験したことが詰まっているのではないでしょうか?
例えば、トンボのシッポ切りや、親戚のお兄さんに遊んでもらったこと。いつしか、成長とともに、そんな記憶をなくなっていきます。
この作品を読めば、幼かった自分の小学校時代を思い出すんですよね。
子どものころって、決して楽じゃなかったなー。それなりになんか考えていたんだよなー。
この作品のあとがきに作者も書いています。

こうした悩みもいつしか成長とともに消えていきます。記憶も薄くなっていくんですよね。
でもこの作品を読むと、思い出してくるから不思議。

親戚の人たち。あのころの友だち。あこがれていた先生。
懐かしいなー。
痛い小説です。しかし、幼いときだからこその苦い記憶も、成長とともに、消えていくんですね。それがわかっているから、むしろ爽快な気分になっていく小説なんでしょう。

この作者さん、本当に上手い。
幼いあの頃に、戻りましょう。子ども達を見る目も変わってきます。
そんな秀作をぜひぜひ。

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

コンテントヘッダー

夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦

夜は短し歩けよ乙女 夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦 (2006/11/29)
角川書店
この商品の詳細を見る


<御都合主義でもいいじゃん!なむなむ!>

京都の大学に通う私は、後輩に一目ぼれ。夜の先斗町、古本市、学園祭。偶然を装い、彼女を追うが微妙なすれ違い。ただ外堀をうめるだけの日々が続くのか。

噂の作家さん、初読みです。
なんなんだ、これは。驚きとなれない文章に四苦八苦。時間がかかってしまいました。
しかし、内容は青春奇想小説といいましょうか。やっぱり驚きの一冊でした。

まず、先輩と後輩の二人の視点で物語は交互に語られていきます。なぜ、交互にしたのかは最終章までたどり着いたとき、分かるんですよ。追えども追えども、微妙なすれ違いをしてしまう、先輩と後輩の黒髪の乙女。この黒髪の乙女が、今や貴重な超天然少女なのです。

設定がいいですよね。この黒髪の少女が結婚式の二次会が終わり、夜の先斗町に繰り出すところから、物語が始まるのですが、そこでの出会う人たちがおかしい。錦鯉を愛する東堂さん、美女ではあるが大酒飲みの羽貫さん、いつも浴衣姿の樋口君、そして謎の老人・李白さん。とっても不思議で魅力的な人たちなのです。
その他に詭弁論部に閨房調査団など、何ともいえないおかしさなんですよ。そんな人たちが起こす事件とそれに関わっていく黒髪の乙女と、影から追い続ける私。可笑しいやら悲しいやら。

京都が舞台でちゃんと四季があるというのも、成功ですね。わたしは夏が好きですね。古本屋の神様が古本について、講釈するところなぞ、ワクワクして読んでしまいました。
京都だからこそこうした奇想の数々が浮かぶのかなー。奇想だけではなく、ちゃんと恋愛小説の形もなしていて、読後も爽やかなんです。

それにしても、お友だちパンチを繰り出し、「こうして出逢ったのも、何かの御縁。なむなむ!」と祈る黒髪の乙女の可愛さといったら…。貴重キャラかもしれません。本当に面白くてバカらしい小説です。

しかし、今や大人気の森見さん初読みも、この独特の文章に慣れるまで苦労しました。しかし、ファンタジーがあまり得意ではない、わたしもいつしか引きずり込まれて、最後まで読んだ作品でした。次の作品も読んでみようかなー。
コンテントヘッダー

6ステイン 福井晴敏

6ステイン 6ステイン
福井 晴敏 (2007/04/13)
講談社
この商品の詳細を見る


<短編とは思えぬ迫力。市井に生きる工作員たち>

日常は普通の一般市民。その裏では防衛庁情報局所属の工作員という特殊な任務をもつ人たちの短編6編。

まずこの作品の舞台でもある防衛庁情報局とは架空の組織だそうです。しかし、福井さんが書くと、さも実在しているのではないかと錯覚に陥ります。それだけ、あり得るのではないかと思える緻密な書き方なんですね。工作員だけに、人の命を奪うことも正当化されます。この特殊な任務を持つ人々が、福井作品の中で堂々と生きているのです。

国のためにという看板を背負い、冷酷に無感情に無慈悲に自分の仕事を全うしようとしますが、その登場人物たちに気持ちを動かされ、個人として闘っていきます。そうした、彼らが私達を引き込むんですね。

そうそう、この作品を読むと本当に周りが全て疑わしく思えてくるから不思議。裏の裏は表。そのまた裏まで読む彼ら。こういう世界がやはり実在するのでしょうね。

福井さんらしく、戦闘シーンも必ず、盛り込まれています。短編でこれだけ書かれると、わずらわしくなるのですが、その裏の人間心理の書き方がまさに絶妙なのです。

追い込まれながら、組織を捨て、個人のために、闘う彼らに何か勇気付けられるんですよね。冒頭の「いまできる最善のこと」を読んでください。子どもを守るために、「いまできる最善のこと」を、考えていくのです。

「畳算」では夫に捨てられ、旅館を守るおばあさん。今も夫の形見を持って、ずっと待ち続けている。そんな夫との思い出を語るうち、工作員堤もおばあさんの思い出を守るために立ち上がる。いいんですよ、これ。手紙も絶妙です。

その他の作品も、すごく良いです。ちゃんと最後にはサプライズも用意されていて。
冒険、暴力、諜報という形をとりながら、そこに描かれている人間の描写に唸ります。何で早く読まなかったのかなー。
他の福井作品も早く読まなくては。
とにかくすごい、珠玉の作品集なのです。

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

コンテントヘッダー

幸福な食卓 瀬尾まいこ

幸福な食卓 幸福な食卓
瀬尾 まいこ (2007/06)
講談社
この商品の詳細を見る


<家族の幸せは、形ではない>

「父さんは今日で父さんをやめようと思う」父さんはいった。母さんは家出中。兄、直は元天才。主人公佐和子を取り巻くこんなちょっと変わった家族と、ボーイフレンド大浦君との出会いからの中学から高校までを切なく描く。

形は連作短編なんだろうけど、結果、長編だろうと思う作品です。
父さんの言葉で始まる印象的なこの作品は、家族がある事件によって、離れ離れになるかならないかというような中、それぞれの思いが詰まって、かといって今の関係を決して壊そうとせず分かり合っていく、家族の物語です。

何といっても兄、直との関係がいいです。元、天才ですが今は農業。趣味はギター。彼と妹佐和子の関係が温かい。佐和子と母も。そして、父も。

あの出来事が無かったら、普通の楽しい温かな家族だった。それをわかりながら、暮らしている家族。その関係が読者に妙に安心感を与える。
しかし、それだけの話に納まらせないのが瀬尾さんなんです。
あつかましい大浦君と佐和子の出会いの中で育まれる恋がどんどん大きくなっていき、いつしか主題になっていきます。

そして最終話は誰もが涙する話だと思います。そんな佐和子をそれぞれの家族がそれぞれの形で見守ります。父へ投げつけた一言が胸に染みます。しかし、誰も言い返さない。
何て胸に染みるんだろう。家族の幸せは形ではないんだよなー。と思わせてくれる作品です。
あっ、そうそう、直のガールフレンド(恋人?)小林ヨシコがいいんですよね。手作りシュークリームも泣かせるんです。

すべての方に読んでいただきたいそんな作品です。まさにその通り、あなたにとって大切なものとは一体何ですか?そう問いかけて来ます。
題名の通り、食卓がまた美味しそうなんです(母の料理も直の料理もいいんです)。
語ればネタバレになるし、語りたい衝動に突き動かされるそんな作品。とってもいいです。

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

コンテントヘッダー

だいこん 山本一力

だいこん だいこん
山本 一力 (2005/01/21)
光文社
この商品の詳細を見る


<一家を背負う、つばきちゃんは、えらい!>

浅草の一膳飯屋「だいこん」を15歳で興したつばき。そのひらめきは幼い頃からの経験によるもの。飯を炊くことが誰よりも上手かったつばき。そのつばきが「だいこん」を切り盛りする中から生まれる、アイデア。決して苦難にひるむことなく、立ち向かってゆく。

山本一力さん2作目。「梅咲きぬ」に匹敵する面白さです。

「梅咲きぬ」は老舗の誇りを背負った物語。「だいこん」は一家を背負って一膳飯屋「だいこん」を起こすつばきの話。
ストーリーは「だいこん」がいいですねー。脇役は「梅咲きぬ」かなー。この作品も素晴らしいです。

のつばきは幼い頃から、父の姿を見て育ち、父を教訓として一人で「だいこん」を立ち上げます。
人を見る目やものの考え方は、父に教わりながら。

次々といろんな困難がつばきにふりかかります。そうした時につばきのアイデアが窮地を救います。こうした困難に遭遇したときの対処の仕方を教わったような気がします。
つばきのように強くなりたいなー。

前半はつばきの幼い頃の父の姿が丁寧に書かれています。これは、先にも書いたように幼い頃の経験が強くだいこんに反映されていくからです。酒と博打が好きで借金を返すことができない父と家族の姿は涙ものです。しかし、物見番の賄いとして通ううち自分の才能に目覚めていきます。

いい本というのはいつも思うのですが、中盤からぐっと加速させるものを持っていると思います。この「だいこん」もそう。
店をもつことを決意したつばきのりりしさに感動し、入り込んでいきました。 しかし、父安治のだらしなさって。でも、わたしにはつばきの気持ちがわかります。
どんなにだらしなくても父の優しさが大好きなんです。こういうところが山本一力さんなのですよね。
家族はどんな境遇であろうと温かいもの。そういっているようでした。

後半に向かうにつれ、だいこんをますます繁栄させていくつばきが書かれます。経営って難しいんですよね。
ともあれ、この作品も人生の「指南書」です。つばきの姿を読み、読者がどういう風に思うのか。これも山本さんの計算なんです。
繁栄している現在に居座らず、さらに上をめざすつばきの姿にやっぱり元気をもらいました。
だいこん深川編が読みたい、山本一力さん。
最後に言います。恋を成就させてあげてください。

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

コンテントヘッダー

初恋温泉 吉田修一

初恋温泉 初恋温泉
吉田 修一 (2006/06)
集英社
この商品の詳細を見る


<温泉に行きたい!>

温泉を舞台にした五話。離婚間際の夫婦、結婚間近の男女、不倫旅行、結婚数年の夫婦、高校生のカップルといずれも男と女が温泉を舞台に、過去や、現在、そして将来など、その心模様を描いていく。

この作品は、「今すぐ温泉に行きたい!」と思える作品です。実際の温泉名と、宿も出ていて、温泉ファンにはたまらない一冊だろう。もちろん、温泉ファンでなくても、こんな温泉に行ってみたいと思えてくるから不思議。
私が好きなのは、那須塩原温泉かなー。それから熊本黒川温泉。
それぞれ、思い出の場所であったりして(黒川温泉は通っただけですけど)。しかし、こんな男女の話ではないですけどねー。

五話の中では「風来温泉」(那須塩原温泉)がいい。話は、仕事一筋で家庭のために働いていた男が、妻を叩きつけるケンカをしてしまい、一人温泉へ。そこで出会った、一人の女。温泉と仕事と妻との関係、見知らぬ女性への期待などが書かれていますが、その温泉で一陣の風が吹くんです。その描写がとってもいい。
「今、風が見えましたよね」
風の描写とそれぞれの心が重なって、実にいいんです。

一番お気に入りは最終話の「純情温泉」(黒川温泉)。高校生のカップルが親には内緒で温泉旅行をする。若いというのは本当にいいもんだと思えてくる。この二人にとって、将来はとっても輝いているんですね。温泉の露天風呂で見上げた空に光る星の様に。
主人公の一人、真希ちゃんは、なんと、大人びていることか。

初々しいカップルを最後に持って来ているのも作者の意図したところなんでしょう。男と女は出会いから別れまで、実に深いんです。
温泉に行きたくなる一冊です。

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

コンテントヘッダー

梅咲きぬ 山本一力

梅咲きぬ 梅咲きぬ
山本 一力 (2004/12)
潮出版社
この商品の詳細を見る

<人生を教えてくれる、これぞ指南書>

深川の料亭江戸屋のお女将、秀弥。それは代々お女将に継がれる名前である。
その3代目秀弥と、その子供玉枝の幼少からを描き、周囲の人たちに支えられながら、4代目を継ぎ、江戸屋を守っていく姿を描く。

玉枝の幼少のくだりは泣かせます。子供だからといって甘やかされません。江戸屋を守るために厳しい作法と世の仕組み、人付き合いとはと徹底的に叩き込まれます。それは、厳しいけれど子供という暖かな目で、深川の人が見てくれている。

そして、周囲がその度量に気付き、4代目秀弥を認めていきます。
幼少の頃のくだりは涙、涙。それは、子供という枠ではなく、すでに大人としてしか見ない大人たちへの怒りもあって。
しかし、しかし周囲があったかいんですね。
踊りの師匠春雅、その夫福松、板長謙蔵、仲居の市弥。登場人物が活き活きと語り、人生を教えてくれます。

最後まで貫いているのはこの言葉。

「つらいときは、好きなだけ泣きなはれ。足るだけ泣いたらよろし。そやけど、自分が可哀想やいうて、あわれむことだけはあきまへんえ。それは毒や。つろうて泣くのと、哀れむのとは違いますよってな」
路地で泣いているうちに、子供なりにわきまえが持てた。何であたしばっかりと思うことが、自分をあわれんでいる……。それに思い当たった玉枝はあとの涙を抑えた。

こうして4代目としての度量を培っていくのです。その他にも自分の程、そして自分の分のわきまえ方など、うんうんとうなづいて読み進めました。
今の世の中なんとわからない人の多いことか…。

とにかくすばらしい。初めての方もそうでない方もこの名作を読んでください。

あなたも江戸時代の深川に生きてみたいと思うこと間違いなしの名作です。人情と矜持、生きる術と人付き合いの妙を教えてもらいました。
ただ残念なのは玉枝の恋か…。

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

コンテントヘッダー

バスジャック 三崎亜記

バスジャック バスジャック
三崎 亜記 (2005/11/26)
集英社
この商品の詳細を見る

<何とも奇妙で不思議な味。堂々の三崎ワールド>

前作の「となり町戦争」では日常の中にある日、突然、非日常の戦争が飛び込んでくるという設定で読者を驚かせてくれました。その作者が織り成す、何とも奇妙で不思議な短編集。

仕事から帰ると、二階扉をつけて欲しいという奇妙な依頼があるが、何のための二階扉かが分からない…「二階扉をつけてください」
「今、バスジャックがブームである」という言葉から始まる…「バスジャック」
動物を完全に演じる奇妙な職業の日野原。動物園での仕事を受けたものの…「動物園」
お母さんが突然いなくなり、見つけて着いたところは、全く人形としか思えないものを車椅子で押す人たちが集まるホームだった…「送りの夏」
この4編が特に秀逸です。その間にある短編、長短編たちがとってもほっとさせてくれます。特に「しあわせな光」は超短編ではあるけれど、とっても幸せな気持ちにさせてくれます。

この作者の持ち味なんだろうけど、本当に怖いです。「二階扉をつけてください」のラストに寒気がしてきます。平然とした顔で人形を押している「送りの夏」でのホームの人たち。こちらは心理的に怖い。
そして、とにかくブラック要素がたっぷり詰め込まれています。「バスジャック」をゲームにしてしまうなんて。ちょっとやりすぎだとは思うんですが、それを敢えて書く作者はすごい。現在の動物園事情を網羅した「動物園」。

そして、悲しい。「しあわせな光」「二人の記憶」、そして生と死について考えさせられる「送りの夏」が、とても切ないんです。
この作品集を読んでいて、星新一さんや阿刀田高さん、筒井康隆さんと重ねてしまうのはわたしだけでしょうか。

ホラー、ユーモア、パロディととっても多彩な三崎さんに脱帽です。そして文章にスピード感を感じさせてくれますので、すぐに入り込んで楽しめた作品でした。
三崎亜記さんは今後も注目する作家さんです。

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

コンテントヘッダー

博士の愛した数式 小川洋子

博士の愛した数式 博士の愛した数式
小川 洋子 (2005/11/26)
新潮社
この商品の詳細を見る


<数字、それはなんて美しいものなんだろう>

家政婦のわたしは、事故のため記憶が80分しかもたない数学博士の下にいくことに。靴のサイズを発端に、わたしと阪神タイガース大好きの息子√とともに博士との奇妙で温かい交流が始まる。

淡々とわたしと息子と博士の、日常が語られていきます。
80分しか記憶がない博士の家政婦となった、わたし。しだいにこの数学博士の数字の魅力に取り付かれていきます。
「君の靴のサイズはいくつかね」で始まる数字の魅力にはまっていきます。
誕生日と博士の論文の賞の数字が、友愛数であると語られていくところから、切り離せない存在になっていくんですね。

そして息子√と博士の関係。阪神タイガースが大好きな息子√。江夏が活躍している時代しか記憶にない博士。博士を気づかう√少年。なんて愛情深い、いい子なんでしょう。
ケガをしたときに博士を気づかうルート少年に涙しました。
√の誕生日のシーンも涙。

なんて奇妙で不思議で悲しく、温かい作品なんでしょう。
いい作品です。
そして、わたしにとってはもうひとつ。江夏なんです。わたしの時代のヒーローですよね。王、長島をライバルとして、牙をむいた江夏選手ののエピソードが満載です。江夏選手の背番号も完全数なんですよね。

日ごろは何気なく見ていた数字の世界。あっ、これは素数ではないか、なんて思って数字の世界にはまっています。フェルマーの最終定理も出てきます。
80分の記憶なのでメモだらけの博士。それを受け入れ、接する親子。いい話だなー。
しかし、疑問。博士の愛した数式は一体なんなのですか?
今いち、その意味がわからなかったのが、わたしの不満。
これは一重に読み手のせいでしょう。
何度もいいます。いい作品です。第1回本屋大賞受賞作品もうなづけます。
ぜひ、ぜひこの名作を読んでいただきたいのです。

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

よし

Author:よし
本好きですが、読むのは遅いです。読書メーターやってます。

ただし、スパムが多いため、コメントは承認制、TBは現在禁止しています。

カレンダー(月別)
05 ≪│2007/06│≫ 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
今読んでいる本
よしの今読んでる本
最近の記事+コメント
ブログリスト
あわせて読みたい

あわせて読みたい

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

ブログ内検索
RSSフィード
最近のトラックバック
カテゴリー
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。