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天使はモップを持って  近藤史恵

天使はモップを持って (文春文庫)天使はモップを持って (文春文庫)
(2006/06)
近藤 史恵

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<掃除をやっていれば見えるものもあるのよ>

またしても、近藤さんです。この作品、ユーモアミステリーと思いきや、どうも違ったようで。各作品が、何だかとっても辛かったのです。でもでも、最後は…。

深く刺さった、小さな棘のような悪意が、平和なオフィスに8つの事件をひきおこす。社会人一年生の大介にはさっぱり犯人の見当がつかないのだが―「歩いたあとには、1ミクロンの塵も落ちていない」という掃除の天才、そして、とても掃除スタッフには見えないほどお洒落な女の子・キリコが鋭い洞察力で真相をぴたりと当てる。 【BOOKデータベースより】


何だか、時間がかかってしまいました。『タルト・タタンの夢』のようなほのぼの系を期待していたのですが、外れてしまいました。何でかなー。きっとこの作品が、日常に潜む人の悪意を描いているからなんでしょうね。決して爽快な話ばかりではありません。ただ、そんな人間に潜む悪意を、ビルの清掃をたった一人でやっているキリコという女の子が、解明していくんです。

冒頭の「オペレータールームの怪」では、新入社員の大介と清掃員のキリコとの出会いの章でもあるんですが、さっそく事件に巻き込まれるんですね。大介の机の上に置かれた書類が消えるんです。それが1回ではなく続いて。果たして真相は…。清掃をしている、キリコではないと見えないものが見えてくるんです。そして、「失敗したと人から思われることが、我慢できない人種が、この世にはるんだよと思うよ」というキリコにこの短編集が、そんな爽快のものではないと思わせるんですね。

会社が舞台ですから、さまざまな人間関係も出てきます。
「ロッカールームのひよこ」のセクハラの被害にあっている主人公を見てください。セクハラをされ続けても、なぜ反論できないのか。それは、加害者の生活と被害者の欲望が一致していたため。つまり、単にセクハラとは結論付けられない関係だったんですね。それを読まされたとき、ある意味ショックな結末であったかも。

「桃色のパンダ」は不倫をしているという噂の吉田部長の娘のパンダが引き裂かれる。誰が何のために。キリコはいいます。「心がすさんでくると、部屋やトイレは汚れてくるし、汚し方から、その人の精神状態が透けて見えてくる」と。これ、当たっているかも。精神的に疲れているときや、余裕のないときなど、汚しっぱなしだものね。わたしは、精神的にリフレッシュするときには掃除します(笑)。
この短編のラストは悲しいです。

髪をブリーチし、耳にはピアス、日焼けした肌に白いTシャツ、ミニスカート。おまけに美人。そんなキリコなんですが、最後の話「史上最悪のヒーロー」では、キリコが消えてしまいます。悲嘆にくれ、キリコを探す大介と誰もが読むんですよ、これ。いやー、騙されました。
この最後の話がこの作品集を落ち着きあるミステリーに仕上げています。
や、やられたと最後に思うでしょう。

本当にやられました。
続編も読みますとも。またキリコに会いたい。
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タルト・タタンの夢 近藤史恵 

タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)
(2007/10)
近藤 史恵

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<ヴァン・ショーは、いかがですか?>

近藤さんは『サクリファイス』に続いて、二作品目の読書。『サクリファイス』は自転車ロードレースを扱ったスポーツミステリだったのですが、こちらはフレンチ・レストランを舞台にした料理ミステリ。幅広い作家さんです。そんな近藤さん尾この作品の味はというと。

下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。風変わりなシェフのつくる料理は、気取らない、本当にフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。そんな名シェフは実は名探偵でもありました。常連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか? 甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相は? フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?……絶品料理の数々と極上のミステリ7編。【東京創元社HPより】


「ビストロ・パ・マル」は下町の片隅にある小さなフレンチレストラン。カウンター七席、テーブルは五つ。店の名は「悪くない」という意味。シェフの三舟さんは、フランス修行中、「三船敏郎の親戚なのか」と聞かれたりするので、無精髭と後ろで束ねる髪型をしている。従業員は、このシェフと料理人の志村さん、ソムリエの金子さん、そして、ギャルソンのぼくの四人。こじんまりとした店ではあるけど、味は絶品。こんな店に行ってみたいよなー。
ただし、このフランス料理。やはり、めったに行くことのないわたしは、その料理の知識を披露されても、ピンときませんでした。確かに美味しそうではあるのですが。あまりなじみがないからですよね。もっとも、こんな店が近くにあれば、この店の常連客のように毎日とは、いかないまでもいきたくなりますねー。

さて、料理は絶品のこの店のお話ですが、これまた絶品。
どれも、しみじみいいお話が七話といおうか七食といおうか。私が好きなのは、クリスマスイヴに料理人志村と歌手である彼の妻を招いて、ディナーショーを開き、志村と奥さんの出会いの話がいいんです。もちろん、料理はちゃんと出てきます。クリスマスらしいいいお話でした。

「ぬけがらのカスレ」も好きですね。ある女性作家が若い時にランス留学中に出会った男性と誕生日の前夜に食べた、カスレ。それは、何ともお粗末なお料理で、彼を残し、日本へ帰るための決意をすることになる。そしてその真相は、実は。これも好きで、最後はちょっと涙も。

そして、最後の「割り切れないチョコレート」はデザートに出したボンボン・オ・ショコラに不満な男は、シェフに文句をいう「せっかくの料理が台無しだ」と。その男はチョコレート専門店のオーナーだった。その男の店に行って、チョコレートを買うことにしたのだが、数は23個。この店のチョコレートは5、7、11、13という素数で、箱詰めされているのです。
この話もとってもいいです。この素数を選んでいるのはちゃんとわけがあるんですね。

その他の話もいいです。もちろん、フランス料理も紹介されていて、イメージが湧かないなりに美味しそうでした。しかし、一番美味しそうなのは、謎を解いた後にシェフが出してくれる、ヴァン・ショーという飲み物。ワインにクローブ、オレンジ、シナモンを入れ温めたもので、とっても暖まるのだそうです。これが一番、欲しい。

それにしてもこんな店があったらいいなー。そして、言われてみたい。
「ヴァン・ショーはいかがですか?」なんて。
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サクリファイス 近藤史恵

サクリファイス サクリファイス
近藤 史恵 (2007/08)
新潮社
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<勝利は自分ひとりのためだけではない>

今年度ミステリーの話題作。各書評も評価が高いです。
実に幸運に早くも読むことができました。噂どおりの作品に仕上がっています。

白石誓(チカ)は自転車ロードレースチームの若手アシスト。アシストとは、チームのエースを勝たせるため、ある時は先頭を走り、ある時は後続を抑える。そのロードレース中に惨劇が起こる。

この作品は、徹底的に自転車のロードレースシーンが書かれています。
大半はレースなんですね。それが、この作品の疾走感というか、スピード感を増しているんですね。そして、緊張感も迫ってくるんですね。
主人公チカやエースである石尾の生活や環境などは徹底的に省略しています。さすがにチカの過去、恋人だった香乃とのエピソードには触れられていますけど。
そうした、ほとんどロードレースのみの描写にこだわったことが、成功なんですね。

そして、日本では知られていないませんが、ロードレースを取り上げたこと。こんな駆け引きがあることすら、知りませんでした。チームでエースを勝たせるために、チカのようなアシスト役がいることも。
わたしは、モーターレースが好きなんでそういう駆け引きがあることは知っていたんですが、自転車の世界にもあるんですねー。
この題材を取り上げた、作者もすごいと思います。

ずっと石尾の過去の出来事が現在にも、尾を引いています。そして、レース中に起こる惨劇は、一体、なんなのか。
チカは真相を探っていきます。

ミステリーだから、あまり書けませんが、その真相を知った時に、自分が勝利することじゃなく、アシストに徹することが、こんなに大切で信頼されることを改めて知るんですね。そして、チームでの信頼も得ることも。
ページを終えるとき、チカの成長が伺えます。悲惨な結末だけではないところがまたすごい。

この作品は、スポーツ青春成長ミステリーの傑作です。
また好きな作家さんができてしまいました。
プロフィール

よし

Author:よし
本好きですが、読むのは遅いです。読書メーターやってます。

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