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八日目の蝉 角田光代
- 2007/09/25(火) 22:44:25
![]() | 八日目の蝉 角田 光代 (2007/03) 中央公論新社 この商品の詳細を見る |
<私はこの子を知っている。この子も私を知っている>
この前に読んだ「悪人」があまりに強烈だったため、この作品の印象が薄れてしまいました。おまけに、この作品は図書館返却に迫られ、途中止めになったため、感動も薄れてしまったかなー。
しかし、これは今までの角田作品から一転。新境地とも思える作品です。
不倫相手の子どもを、さらって逃げてしまう希和子。行くあてもなく、行き着くところは、名古屋、奈良の怪しげな宗教団体、そして小豆島へ。17年後、さらわれた子どもはかっての逃亡先を訪ねることに。
逃げる希和子人の気持ちが、痛々しくなります。
犯罪をしてしまう気持ちというのでしょうか。切ないんですねー。この気持ち。
この作品は、いつもの角田さんとは少し違った、作風です。ミステリー色が強いかな。子どもさらい、逃げていくというのロードノベルなんですが、立ち退きを迫られている謎のおばさんであったり、怪しげな宗教団体であったり。とても落ち着けるものではありません。
宗教団体での告白大会が泣きますね。「自分の欲しいものは?」希和子は未来と答えるんですね。希和子だけでなく、そこに集まる女性の過去とリンクし、切ないんです。
そして、二章。薫は成長し、実の両親と妹と暮したのだが、事件を引きずりつつ、ギクシャクした関係になっている。
そして、不思議なことに希和子や両親の後を追うように、不倫をしているという設定です。
自分は一体なんなのか。それを見つけるため、希和子という女性を知るために、昔を辿るのですねー。ここが大きなこの作品のキモです。
ここからが、またいいんです。
宗教団体の施設を見ても、思いが湧かないんですが、瀬戸内海と小豆島の風景を見た瞬間、思い出が…。
ここがいいんですね。
八日目の蝉は幸せなのか?幸せなんですよ。だって、それだけ命を与えられているのだから。わたしは、そう思ったのですが。
そうですよね。
角田さんの新境地のこの作品、ミステリー要素も濃いものですね。でも角田さんらしいなー。
本当に小豆島が、とってもいいんです。
愛人とともに、暮した子どもがその過去に縛られながら、現在を生きるために、辿った旅。素晴らしい作品に仕上がっています。
これは、名作でしょう。
薄闇シルエット 角田光代
- 2007/05/24(木) 21:47:39
![]() | 薄闇シルエット 角田 光代 (2006/12) 角川書店 この商品の詳細を見る |
<負けてもいいじゃん!>
ハナは37歳、恋人タケダくんに「結婚してやる」という思いのまま、結婚する事に違和感を覚える。友人チサトと始めた古着屋は順調だったが、タケダくんとの結婚話を機に今までとこれからについて、惑うことになる。
年を重ねるごとに、周りはどんどん変わっていく。あの人もこの人も。そんな中で取り残されている自分。そんな事を思ったことはありませんか。わたしも例外ではなく、そんな思いが今もあります。
変わらないといけないんだけど、変われない。変わることが大人というのであれば、まだまだ子どもの自分。つまり、ハナは自分なんですよね。だから、この作品を読むとハナに感情移入してしまうんです。
片や、専業主婦のナエの思いや、友人チサトとの仕事をめぐってのぶつかり。そんな中で、なやんでいきます。
母の急死も影響します。かたくなに自分達のために、家族のために、平凡に生きてきた母は、何を望んでいたんだろう。母の生き方も、今のハナに突きささります。
角田さんは本当に上手い作家さんです。この絶妙な会話を見よ。実に登場人物が生き生きとしています。
そして、実に心理描写が上手い。この感覚こそリアルなんですよ。友人と始めた仕事も変えたくなくても、変わらないといけない。年齢が年齢だけに結婚も突きつけられる。そんな中で、ハナはもがきます。つまり、人生の勝ち組になるために。しかし、母や妹、チサト、タケダくんなどの生き方を通じ、変わることがすべてじゃないと思い始めます。
こんなに痛い小説は、久しぶりです。ハナの生き方を通じ、ささくれ立ち、こりに凝ったわたしたちの心を解きほぐしてくれます。
そう、負けてもいいではないかと。それがハナなんです。
角田さんの「対岸の彼女」は現代の女性のリアルを描いた傑作だと思います。そして、対岸のもうひとつの傑作が生まれました。
「その人はその人になっていくしかない」
ハナはそう感じ、歩き始めます。いい作品です。
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