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主題歌 柴崎友香
- 2008/07/28(月) 16:39:10
![]() | 主題歌 (2008/03/04) 柴崎 友香 商品詳細を見る |
前から気になっていた作家さんで、図書館からやっと予約が回ってきたので、手に取りました。サクサクと読めました。この作家さん、なかなか上手いですね。
そして、幸せな気持ちにさせてくれた作品です。
この歌がここで歌われたことは消えてしまわない
聞こえてくる人の声、街の音 そして、誰かの心に響く歌がある
「女子好き」な女性たちのみずみずしい日常の物語
第137回芥川賞候補作(「主題歌」)
「愛ちゃんて、かわいいな。こないだの子とはえらい違いやわ」
「誰でもかわいいやなあ、小田ちゃんは」
「誰でもやないよ。いろんなかわいいがあるやん」
ただ、かわいい女の子やきれいな女優を見ていると、それだけで幸せな気持ちになるし、そのことについて話すのが楽しい。
同時収録:「六十の半分」「ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド」
【講談社HPより】
いっぺんさん 朱川湊人
- 2008/02/26(火) 19:17:38
![]() | いっぺんさん (いっぺんさん) 朱川 湊人 (2007/08/17) 実業之日本社 この商品の詳細を見る |
<願いは必ず叶う。ただし、いっぺんだけなあ>
久々にノスタルジックホラーの名手、朱川さんの新作を(ちょっと遅れましたが)読みました。まさにノスタルジックホラーという感じの作品で、やはり、いいなあ。ホラー嫌いの人にもこんなホラーなら読めるのでは。懐かしい香りのする8つの話です。
『花まんま』の直木賞作家が描く命と友情と小さな奇跡の物語。田舎で出合った8つの不思議ストーリー。【BOOKデータベースより】
何といっても表題作「いっぺんさん」がいいですね。友人のしーちゃんといっぺんしか願いを叶えない神様を探しに山に向う。やっとたどり着いた先で願い事をする二人だが。そこから急展開します。二人は、どんな願い事をするのかというところが、この話のキモなんですが、主人公の少年の願い事が、予期せぬことで叶うことになります。そこが、感動するんですねー。短編なので、それもホラーとミステリの融合している作品なので、このぐらいしか書けないのが残念。
鳥がおみくじをする手伝いをする少年。ヤマガラのチュンスケとの交流を描く「小さなふしぎ」もいい。これ昔、どこかで見た鳥の芸だよなー。そして、時代の背景がとっても朱川さんらしいんです。『わくらば日記』にも同じ様な感想を持ったんですが、戦争が終わってからの時代をしっかり、背景にしています。そういう背景だからこそ、チュンスケと少年の交流が心に沁みるんですね。
ホラーだから当然怖いです。『コドモノクニ』の四つの話の怖さ。これ恐怖の四季ですよね。決して、子供達に聞かせられない。昔話をモチーフに朱川流のホラーです。
その他、不思議な村にたどり着き、快楽にふける青年の話「逆井水」。とっても不気味な話「蛇霊憑き」。一転、悲しい物語「八十八姫」など、まさに朱川ワールド全開です。
やっぱり、朱川ホラーは心に沁みる。「いっぺんさん」があまりに良くて、他の作品が少しかすむ気もしますが、様々に楽しめました。
あっ、裏表紙にもちゃんと仕掛けが。これがまた感動するんです。
ぜひぜひ、このノスタルジックホラーの秀作を読まれることをオススメします。
また『花まんま』を読みたくなりました。
黄金の王 白銀の王 沢村 凛
- 2008/01/25(金) 23:19:48
![]() | 黄金の王白銀の王 沢村 凛 (2007/10) 幻冬舎 この商品の詳細を見る |
<平和とは何と難しいものだろう。ファンタジーという歴史小説>
これまた広島出身の作家さん。
この方、ファンタジーでデビューされたのですね。知らなかった。この異世界ファンタジー。最初は、なかなか入り込めなかったのですが、中盤からは一気読み。いやー、これは凄い作品です。
敵に捕われの身となった王と、混乱する二つの国をなだめて総べる王。二人が思い描いた理想は、はたして実現することができるのか?!小谷真理氏大絶賛の歴史ロマンファンタジーの傑作誕生!
「翠」の国。この国では鳳穐一族と旺廈一族が争いの果てに主となっていた。鳳穐の時代の主である、穭(ひづち)は、旺廈一族の頭領、薫衣(くのえ)に提案をします。争い、憎みあう歴史を変える。平和になりたいため、薫衣もこの提案を受け入れます。そして、そこから苦難と苦闘の物語が始まります。
いやー、凄かった。まるで気分は歴史大河小説を読んだよう。
鳳穐と旺廈は互いに血で血を洗う、まさに骨肉の争いなんです。隙あれば殺してやりたいと思っている対立する一族。
その対立する頭領、穭は決断します。川の流れを変えていきたいと。そのために穭の妹、稲積(にお)と薫衣を結婚させます。そして、お互いの血を混ぜ合わせます。そうやって、お互いを押さえ込んでいくのです。しかし、両方の一族からは誹謗、批判、裏切り、謀略、など渦巻き、決して認めようとはしません。しかし、それも分かっていながら、薫衣はうけいれます。その耐え忍ぶ姿の何と、壮烈なこと。妻となった稲積や子供にも困難は降りかかります。
すぐには変わらないけれど、穭の思いと薫衣の願いが徐々に国を変えていきます。そして、大国が攻めてくるのです。その総大将に指名される薫衣。その才能を発揮しだすんですね。この闘いがまた凄い。
いや−、書けば書くほど尽きない。
このままだと全部語ってしまいそうなので、興味のある方はこの作品で。
ただ、決してハッピーエンドというわけではないので。つまり、一族を抑えるためにはこれしかないという道を選んでいくんですね。でもその道は子供達に受け継がれ、やはり、ハッピーエンドということかな。
薫衣の苦渋の生活。暴発する一族に「家紋(雷鳥)は胸にある」と諭すところなど、鳥肌が立つような感動が来るんです。
そして、側室とその子供が死んだとき、悲嘆にくれる薫衣に永年の思いを爆発させる稲積の姿に涙です。
第1章は序章にすぎず、2章、3章と耐えて読んでみてください。この異世界歴史ファンタジーが、決してファンタジーだけではないと気付くでしょう。そう、民族間や部族間での争い、国と国との戦争に対し、作者の願いが凝縮されていると思います。だから、感動を呼ぶんですね。
この「異世界歴史大河ファンタジー」をぜひ。
しかし、読み疲れました(笑)
私の男 桜庭一樹
- 2008/01/09(水) 21:04:55
![]() | 私の男 桜庭 一樹 (2007/10) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
<血の繋がりとは。禁断の愛に溺れる父と娘>
レビューする本はたまりに溜まっているのに、この作品を書かざるにはいられない気分です。それほどすごかった。噂に違わぬ凄い作品でした。1章から引き込まれます。桜庭さんの筆致が冴えて、引き込まれます。うまいし、やはり凄い。この物語を最後まで読ませる力量に脱帽でした。
雨の匂いのする男、淳悟は「私の男」。9歳で震災に遭い、家族をなくした花は、たった一人の親戚という淳悟に引き取られる。しだいに父は娘を。娘は父しか愛せなくなっていた。
小説は、結婚を前にした娘花が結婚する前日、雨の匂いがする男、淳悟が婚約者と合うところから始まります。この冒頭から、惇吾と花のいろんな意味でただならぬ関係が、随所に織り込まれ、さらに過去の暗い事件が、差し込まれます。
そして、過去を遡り、展開していきます。上手いなー。花と惇吾には一体何があったのか。
読み進めるうちに、ぞわぞわする感じが。爽快感ではなく、不快感もたっぷりで、さらに暗く重い。それでもこの小説を読み進めてしまう、不思議さ。ただのノワール小説ではなく、ミステリーでもあるから読んでしまうんですね。
そして、もう一つは、過去に遡って書かれているという小説であるということです。今までにもそういう作品はありましたねー。しかし、それは事件があって、なぜそれに至ったかという説明でした。
この作品は、父と娘が辿ってきた過去と、二人の関係を壊してしまいそうな、二人の人間を殺めてしまうという話が過去に遡って書かれているんです。
しかし、それだけではないんです。父と娘しか持ち得ない、信頼関係の描写が随所にあります。第6章で父と娘が出会うシーンを見てください。血の繫がりがあったからこそ、信頼できる関係であり、禁断の関係になってしまう。間違っているけど、この二人の倫理観では、間違っていないんですね。その描写が、実に怖いんです。
異常ですよね、この関係。冒頭から淳悟という男がまんべんなく描かれているんです。結婚前夜の花に、盗んだ傘を当たり前のように渡すところ。そして、花に大事なものといって、カメラをわたすところとか。このカメラが実はすごく意味のあるものであろうとは。この辺の伏線も実に上手いんです。
ただ…、読ませるんですが、淳悟と花の血の繫がりとはというところが、分からなかったなー。そこはあえて、省略したんでしょうが。淳悟が16歳の時が描かれていないのが、少し不満。しかし、それは謎のままおいていても、このただならぬ関係は起こるべくして、起きたと感じざるを得ません。
桜庭さんはよくこの作品を書いたよなー。挑戦作であり、意欲作です。真っ向から禁忌に挑戦して、しかもここまで引き込む小説を。
乗りに乗っている作家さんです。早くも傑作をものにしてしまいました。疲れるのを覚悟して、この世界に引き込まれてください。
本当に傑作です。
制服捜査 佐々木譲
- 2007/10/11(木) 22:39:16
![]() | 制服捜査 佐々木 譲 (2006/03/23) 新潮社 この商品の詳細を見る |
<犯罪が起きない町に潜む闇>
北海道警の不祥事の煽りで、同じところに長く勤務させないという方針の下、札幌から着任した川久保巡査。小さな町を守る、たった一人の駐在警官。私服から制服に変えて、「何も起きない町」の事件の捜査にあたる。
新しい警察小説という触れ込みは、はずれていないです。従来の警察小説は警察機構の中で、はみ出したり、組織の中で苦しむ主人公が主でした。しかし、この小説ではたった一人の警官。それも事件が起きないのが当たり前のところという、全く違う設定になっています。そんな田舎の町で起きる、事件を前刑事という肩書きがある彼は解いていきます。
管轄する署の刑事たちは、
「制服は捜査するのを邪魔するな」と考えていますが、川久保は
「捜査ではなく、町民の情報を集めるのがわたしの仕事」と言います。捜査もままならない中、事件をどう解決していくんでしょうか。
この小説のベースは、北海道警で起きた裏金事件。この不祥事を巧みに背景に取り入れ、主人公を造形しています。これはネット仲間からの情報ですが、冒頭の「捏造」の事件は、実際の事件がベースのようです。現在も公判中だとのこと。
北海道出身の作家、佐々木さんならではでしょうね。
単独捜査を余儀なくされる主人公を、いつしか励ましています。しかし、各話の解決がどうも、すっきりしないのです。これも最終話「仮装祭」があってこその持っていき方なのでしょうけど、もう少しすっきりと…はわたしの欲なんでしょう。「仮装祭」が良すぎるんですね。「犯罪者を出さない町」に気付くんですね。
しかしながら、この主人公を作った佐々木さんはすごい。作家の逢坂さんも書評で書いていたのですがこれは西部劇なんですね。新任保安官が名もない町に辿りつき、一人で奮闘する。そういう西部劇の世界が、この作品をはじめ、他の作品にも色濃く反映されています。
北海道という地を背景に、紡ぎだす和製西部劇の世界。次はどんな作品を作ってくれるのでしょうか。何とも幅広い作家さんですねー。
かたみ歌 朱川湊人
- 2007/05/22(火) 22:05:27
![]() | かたみ歌 朱川 湊人 (2005/08/19) 新潮社 この商品の詳細を見る |
<昭和40年代の歌とともに、紡ぎだされる不思議な話>
直木賞受賞作、名作「花まんま」と、この「かたみ歌」といった対になる代表作といってもいいと思います。
昭和40年代の東京の下町「アカシア商店街」。古書店の「幸子書房」や異界へと続いてるといわれるお寺の「覚智寺」。レコード店の「流星堂」などこの商店街に暮らす人々の不思議な奇妙な連作短編集。
収録作品は「紫陽花のころ」「夏の落し文」「栞の恋」「おんなごころ」「ひかり猫」「朱鷺色の兆し」「枯葉の天使」。
この中でわたしが好きなのは「夏の落し文」と「栞の恋」。そして最後にあっといわせる「枯葉の天使」「夏の落し文」では、ある日、電柱に貼られた不思議な文句「カラスヤノアサイケイスケアキミレス」の張り紙。これだけではまったく意味不明な言葉。しかし、これはこう読む「ガラス屋の浅井啓介、秋見れず」
すなわちこの短編の主人公のことなのだ。これだけで、もうゾクゾクしてしまいました。
不思議で怖い話ばかり。しかし、決して怖いだけではありません。「花まんま」と同様に妙な懐かしさとそれでいて温かさ、優しさがこの作品にはあります。代表的なのは「おんなごころ」の残酷さを見事に「枯葉の天使」でほのぼのと優しい気分にさせています。
そしてこの作品の中で使われているのが昭和40年代の歌の数々。「アカシヤの雨がやむとき」「黒猫のタンゴ」「ブルーシャトー」「モナリザの微笑み」。
あなたは何曲知っていますか。タイトルの「かたみ歌」はこうした歌を背景に物語が綴られていることによりつけられています。歌は世につれということを実感するとともに、実に懐かしい味なのです。
この商店街で不思議な物語の中心に絡んでいる「幸子書房」。この書店もちゃんと話を作っている。噂では異界との境界であるという「覚智寺」より、本当の境界は「幸子書房」にあるということを気付くはずです。
一話ごとの完成度は「花まんま」が良いと思います。しかし連作短編集ということも考えればトータルとしては「かたみ歌」が良い。
「花まんま」「かたみ歌」まさに作者の代表作であるのは間違いないようです。
朱川ワールドをじっくり堪能して下さい。
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